こんにちは、洋平です。
今回は、行政書士として開業する際にワンルームの自宅を事務所として使えるのか
どうかについて詳しく見ていきましょう。
行政書士事務所とする物件が備えるべき要件
行政書士法人に就職する場合を除いて、
行政書士登録を行う場合には必ず「事務所」を構えないといけません。
その事務所も何でも良いわけではなく、いくつか設けられている要件を
クリアした物件でないと行政書士事務所として使えないのです。
都道府県の行政書士会によって多少違いはあるものの、
・物件の使用権原が適正である
・行政書士事務所であることを明示する「表札」を掲げる
・業務上の秘密が保持できる環境である
などが主な要件となっています。
まず「使用権原が適正」ですが、これは簡単に言うと「所有者が物件を
行政書士事務所として使うことを認めているかどうか」ということです。
自宅が持ち家で一戸建てなおかつ名義が行政書士となるあなたなら、
誰か許可を得なくても使用権原は適正となります。
ただ持ち家一戸建てでも、名義があなたではなく配偶者や親の場合は、
所有者に自宅を行政書士事務所として使う許可を取らないといけません。
賃貸の一戸建ての場合は、当然物件の所有者であるオーナーや
物件を管理している管理会社の許可が必要となります。
一戸建ての使用権原は比較的単純で分かりやすいのですが、
マンションやアパートといった集合住宅の使用権原は少しややこしいです。
分譲でも賃貸でも集合住宅の管理規約に「所有者は専有部分を専ら住宅として
使用すること」「住宅以外の用途に供してはならない」と記されているケースがあります。
この場合は、集合住宅の一室を行政書士事務所として使うことは難しいですね。
もし「住宅以外の用途に供してはならない」という規約が無くても、
事前にオーナーや管理会社の許可、さらに管理組合の承認を得る必要がありますよ。
行政書士事務所であることを明示する「表札」を掲げる
次に「表札を掲げる」ですが、これは外から見た不特定多数の人に
「ここに行政書士事務所がある」と認識させるために必要なことです。
行政書士事務所の表札を掲げることは、
法律で定められた行政書士の義務となっています。
持ち家一戸建てで所有者があなたなら何の問題もありませんし、
配偶者や親が物件の所有者でも許可が取りやすいです。
一戸建ての賃貸住宅で行政書士事務所として使う許可が出ていれば、
恐らく表札を掲げることも許してもらえる可能性が高いと思います。
問題はマンションなど集合住宅で、部屋を行政書士事務所として使うのはOKでも、
表から見えるところに表札を掲げるのはNGとされるケースがあります。
そこに行政書士事務所があることを明示することは義務ですから、
表札を掲げることを許可してもらえないと事務所としては使えません。
なので集合住宅に行政書士事務所を構えようと考えている場合は、事務所としての
使用と同時に表札掲示についてもオーナーなどに事前に相談しておきましょう。
業務上の秘密が保持できる環境である
3つ目の「業務上の秘密が保持できる環境」ですが、
これは「行政書士事務所として独立性が保たれているかどうか」ということです。
事務所として使用する物件を借りるなり購入する場合は、
そこは行政書士事務所としてしか使いませんから当然「独立性」は保たれています。
問題は自宅開業で、1つの物件を自宅と事務所の両方として使用する場合です。
まず自宅としての居住スペースと事務所として事務・接客スペースが
完全に分かれていないといけません。
例えば1フロアに2部屋あって、玄関からそれぞれの部屋に直接入れるのであれば、
1部屋を自宅、もう1部屋を事務所として使うことができます。
ところが同じ1フロア2部屋でも、Aの部屋は玄関から直接入れるけれど、
Bの部屋はAの部屋を通らないと入れない場合はNGです。
Aの部屋を居住スペースにすると、
事務所スペースへ入るには居住スペースを通らないといけないことになります。
反対にBを居住スペースにすると、家族など同居人が居る場合には
事務所スペースを通って居住スペースに出入りすることなります。
いずれの場合でも、事務所に相談や依頼に来たお客さんは
行政書士以外の同居人と顔合わせる可能性が高いです。
そうすると「完璧に秘密が保持できる環境」とは言いにくくなりますから、
行政書士事務所として使うには不適格と判断されてしまうのです。
建物の構造上、居住スペースと事務所スペースを完全に分離できない場合は、
カーテンやパーテーションを使って動線を確保するようにしましょう。
居住スペースを通るけどもカーテンなどで目隠しすることで、
家族など同居人と顔を合わせることが無いようにするわけです。
できれば接客スペースと事務スペースも分けた方が良い
事務所として使うスペースに余裕があるなら、
接客スペースと事務スペースも分けておいた方が良いですよ。
行政書士は全く別の案件を同時に進めないといけない状況になることもあります。
例えば依頼者Aに頼まれた書類を事務スペースで作成している時に、
依頼者Bが事務所を訪ねてきたとします。
目の前に居るBを長々待たせるわけにはいきませんから、
当然書類作成を中断してBに応対することになります。
Bへの応対が終われば書類作成を再開するので、
作成途中の資料は事務机の上に広げたままにしているケースもあるでしょう。
接客スペースと事務スペースが分かれていないと、事務机の上に広げたままの
作成途中の書類を依頼者Bに見られてしまう恐れがあるのです。
それでは「完璧に秘密が保持できる環境」とは言えませんから、
できれば接客スペースと事務スペースは分けておいた方が良いわけです。
スペースが分けられない場合は、お客さんが来たら関係の無い書類は片付ける、
画面がお客さんの位置から見えないようにパソコンを配置するなどの配慮が必要です。
行政書士の自宅開業は可能、でもワンルームは難しい
先に紹介した行政書士事務所に求められる要件を満たしていれば、
自宅を行政書士事務所として使うことは可能です。
ただ自宅がワンルームの場合は、
行政書士を自宅開業することはかなり難しいと言わざるを得ません。
ワンルームを行政書士事務所として使うには、
「オーナーや管理組合の承認がもらえるかどうか」が第一のハードルとなります。
先にも書いたように、集合住宅では「住宅以外の用途に使えない」という趣旨の規約が
設けらえているケースが少なからずあります。
そのためワンルームマンションの一室で行政書士事務所を開業しようとしても、
オーナーや管理組合の承諾がもらえないことも十分に考えられますのです。
さらに自宅のワンルームでは居住スペースと事務所スペースを分離することが難しく、
「秘密が保持できる環境」が第二のハードルとなります。
ワンルームでも通常の2~3部屋分の広さがあれば、パーテーションなどで
居住スペースと事務所スペースを分けることができるかもしれません。
しかし一般的な広さのワンルームだと、
居住スペースと事務所スペースを分けることは難しいどころかほぼ無理です。
ですから自宅がワンルームの場合は、
行政書士として自宅開業するのはかなり難しいと思っておいた方が良いですね。
登録時に現地調査があるのでごまかすことはできない
「ワンルームでもスペースを分けられたり、2部屋のようにごまかせるのでは?」という
不届きなことを考える人も居るかもしれません。
行政書士法人に所属する場合を除いては、
行政書士開業時に事務所を構える必要があります。
そのため行政書士登録の際に、事務所となる物件の
・平面図、間取り図
・外観や内観の写真
・使用権原に関する書面
などを提出しなければいけません。
ちなみに「使用権原に関する書面」は、持ち家なら「登記簿」、
賃貸なら「賃貸借契約書」とオーナーや管理組合の「使用承諾書」などです。
さらに、事務所を構えるエリアを管轄する行政書士会支部の支部長など
担当者による「現地調査」も行われます。
図面や写真の提出だけならごまかせるかもしれませんが、
現地調査が行われるのでごまかすことはできないのです。
事務所以外には全く問題が無くても、
現地調査の結果で不適格となって登録が認められないことも考えられますよ。
なので行政書士登録する際には、
要件を満たした事務所となる物件を用意しておく必要があるわけです。
自宅開業するデメリット
行政書士登録するに当たって、
事務所を自宅にするか別に物件を借りるかで迷うことも少なくありません。
自宅開業する最大のデメリットは「自宅住所を公開する」ということです。
行政書士登録すると、日本行政書士会連合会のホームページに行政書士番号や
所属行政書士会などともに「事務所所在地」が掲載されます。
自宅が事務所だと事務所所在地は自宅住所となりますから、
必然的に自宅住所をネットで公開することになってしまうのです。
何か悪さをされることはないでしょうが、一人暮らしだったり小さいお子さんが
居たりすると自宅住所を公表することには不安が付きまといます。
自宅が事務所だと公私を分けにくい
行政書士が自宅開業すると、「公私を分けにくい」というデメリットもあります。
様々な社会事情によってこの数年でテレワークや在宅勤務を行う機会が
増えていますが、公私の切り替えが難しく仕事がしにくいという声もよく聞かれます。
その人の性格によるところも大きいですが、自宅だと依頼者との約束が無いと
ラフな格好で仕事に取り掛かるといったこともあるかもしれません。
さらに横になろうと思えばいつでもなれる環境ですし、
かなりストイックにならないと公私がごちゃ混ぜになってしまいます。
また「今日は休み」と思っていても、
依頼者が直接訪ねてきて対応せざるをえないといったことも起こりえます。
たとえば仕事をする時は人に見られて恥ずかしくない服装に着替えるなど、
自宅開業する場合は自分なりに公私を切り替える方法を作っておきましょう。
家族以外の従業員を雇うのが難しい
自宅開業だと、家族以外の人を従業員として雇うことが難しいです。
開業したてで仕事の少ない内は1人でも対応できますが、
仕事量が多くなってくると行政書士補助者や事務スタッフが必要となります。
ちなみに「行政書士補助者」は、書類作成の補助や顧客対応など行政書士としての
仕事をサポートしてくれる存在です。
資格は必要ありませんが、雇用主である行政書士が所属する都道府県の
行政書士会に登録することになります。
事務スタッフは電話対応や会計業務など、
行政書士の仕事以外の業務をサポートしてくれるスタッフで、資格も登録も不要です。
自宅開業で家族以外の補助者やスタッフを雇うと、
同居する家族からすると自宅に知らない人が居るという抵抗感が生まれます。
実際に家族と補助者などが顔を合わせると、互いに気まずい状況になってしまいます。
そう考えると、
自宅開業では家族以外に補助者やスタッフとして人を雇うことが難しくなるわけです。
依頼者の信用を得にくい
自宅を行政書士事務所とすると、依頼者の信用を得にくいことがあります。
別に自宅以外に事務所を構えているから優秀、
自宅が事務所だと優秀じゃないというわけではありません。
実際に自宅開業で成功している行政書士もたくさん居ます。
とは言え仕事をお願いする側の依頼者の目には、自宅を事務所として使っていると
「別で事務所を借りられないほど仕事が少ない行政書士」と映ってしまいます。
さらに「仕事ができない行政書士」と思われて、
結果的に仕事を依頼してもらえなくなってしまう恐れがあるのです。
ただ、事務所が自宅かどうかで行政書士の良し悪しを判断する人は
それほど多いわけではありません。
なので、自宅開業だと依頼者の信用を得にくいこともあるという程度で、
そんなに深刻に考える必要は無いですよ。
行政書士が自宅開業するメリット
では反対に行政書士が自宅開業するメリットにはどういったものがあるのでしょうか?
自宅開業の最大のメリットと言って良いのが「節約できること」です。
自宅以外に事務所を構えるとなると、
当然物件を借りるか購入するかしないといけません。
借りるとなると家賃が発生しますし、購入するとなると様々な税金がかかってきます。
自宅を事務所にすれば、事務所に家賃は発生しませんし、
固定資産税などの税金もかかりません。
さらに事務所で使っている分の水道光熱費を経費として計上することができますし、
賃貸住宅の場合は家賃の一部も事務所の経費とすることができます。
そのため多少ではありますが、自宅を事務所として使うことが節税対策にもなるのです。
時間の節約にもなる
自宅が事務所だと通勤・帰宅が不要ですから、
本来通勤や帰宅にかかる時間を仕事やプライベートに充てることができます。
開業してからある程度仕事に慣れるまでは、
書類1つ作成するのにも色々と調べ物をしなければならなかったりします。
そのため通勤や帰宅に無駄な時間を取られると、
依頼者が設定した期限までに仕事が終えられないことになってしまうのです。
しかし事務所が自宅で通勤や帰宅にかかる時間を仕事に充てることができれば、
多少手間取ったとしても期限内に仕事を終わらせることができます。
郵便物受け取りやFAXの確認だけに事務所に足を運ぶ必要が無い
自宅以外に事務所を構えていると、郵便物を受け取ったりFAXを確認するためだけに
事務所に足を運ばないといけません。
依頼者は当然自分の都合の良い曜日、時間に郵便物やFAXを送りますから、
業務時間外や休日に届くケースも少なくないのです。
FAXはともかく郵便物に関してはいつ届くか分からないので、届くまで事務所で
待っておく必要があり、せっかくの休日が潰れてしまう恐れがあります。
事務所が自宅であれば行政書士への郵便物やFAXも自宅に届きます。
取りに行く手間と時間が省けますし、受け取り損ねたり届いているのに
気付かないといったリスクも避けることができますよ。
まとめ
行政書士の自宅開業について見てきましたが、
ルール的には自宅を行政書士事務所として使うことには何の問題もありません。
ただ自宅がワンルームの場合は、居住スペースと事務所スペースを
完全に分けることが難しいため、自宅開業するのは厳しいです。
また自宅開業にはメリットもあればデメリットもあります。
なので行政書士を開業する際には、メリットをデメリットを天秤にかけて、
事務所を自宅に置くか否かを考えましょう。
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