こんにちは、洋平です。
国や自治体が行っている補助金事業を利用するのに補助金申請代行サービスを
頼ることがありますが、実はこのサービスにはグレーな部分があります。
補助金申請代行サービスがグレーなのはどうしてか、
補助金事業を利用する際にどこを頼れば良いのかなどについて詳しく見ていきましょう。
補助金申請代行サービスは行政書士法違反?
補助金申請代行サービスがグレーとされる理由は、
基本的に補助金の申請業務は行政書士の独占業務だからです。
簡単に言うと、補助金事業を利用したい本人に代わって申請書類を作成して
事業主体である官公署に提出することは行政書士にしかできないということです。
ちなみに補助金申請書類の作成代行だけでなら中小企業診断士でも可能ですが、
官公署への提出代行は行政書士のみです。
補助金申請代行サービスを提供している事業者に行政書士が居て、
書類作成と官公署への提出を行政書士が行っているなら何の問題もありません。
事業者に中小企業診断士が居る場合は申請書類の作成代行だけならOKです。
ただ事業者の中に行政書士も中小企業診断士も居ないのに
補助金の申請代行サービスを行っている場合は行政書士法違反となってしまいます。
行政書士法違反が問われるのは申請代行サービスを提供している事業者ですが、
違法なサービスを利用した申請では当然補助金は交付されません。
もし交付決定後後に行政書士法違反が発覚した場合は交付取り消し、
補助金を受け取った後だと補助金の返還が必要です。
補助金申請代行サービスを利用する場合には、
事前に書類作成と提出を行政書士が行うのかを確認しておかないといけないのです。
補助金申請代行サービスがグレーな理由
行政書士が関わっていない補助金申請代行サービスは
行政書士法違反の可能性があるものの、完全に違反しているとは言えません。
補助金申請代行サービスがクロではなくグレーな理由は、
行政書士の独占業務の範囲が少し分かりにくいからです。
補助金の申請に必要な書類作成や官公署への提出を有償すなわち料金を
受け取って代行するのは行政書士にしかできません。
ところが無償すなわち料金を受け取らない場合には補助金申請書類の作成や提出を
代行しても行政書士法違反にはならないのです。
あくまで商売として書類作成や提出の代行は行政書士にしかできないだけで、
商売でなければ法律違反にはならないというわけです。
過去に補助金申請をした経験を生かして、知り合いの会社やお店の
補助金申請手続きを手伝ってあげるぐらいなら問題ありません。
ただし手伝ったお礼に金品を受け取ると商売と見なされるので行政書士法違反と
なってしまいます。
相談の範疇を越えなければ有償でも違法にならない
補助金申請代行サービスのサービス内容が相談の範疇に収まっていれば
有償でも行政書士法違反にはなりません。
例えば補助金申請にどういった書類が必要なのか、申請書類はどういった書き方を
すれば良いのかを教えるぐらいなら相談の範疇に収まります。
また実際に作成した書類を見て
・もっとハッキリした表現にした方が良い
・もう少し細かく説明しないと分かりにくい
など改善案を提示するのも相談の範疇を超えません。
書類を作成するのは申請者本人で、
第三者が有償で改善案の提示や添削を行うのはOKです。
ただしあくまで案の提示や添削がOKなだけで、
用意したサンプルを書き写させるところまで行くとアウトとなる恐れがあります。
民間企業の補助金申請は行政書士法の対象外
一般的に補助金は国や自治体の官公署が行う事業と思われていますが、
金融機関など民間企業が行っている補助金事業も一部あります。
金融機関など民間企業が行っている補助金事業の申請代行は行政書士法の対象では
ありません。
行政書士法の対象は官公署の補助金事業の申請代行で、民間企業の補助金事業の
申請を行政書士以外が有償で代行しても行政書士法違反にはならないのです。
ただし事業主体が官公署で窓口が民間企業の場合は、
官公署の補助金事業なので行政書士法の対象です。
事業者によっては「これは民間企業に提出する書類だから行政書士以外が作成や
提出を代行しても大丈夫」という理屈で代行サービスを勧めることがあります。
実際に官公署が実施している補助金事業では民間企業が窓口となっているケースが
少なくありません。
窓口になっているだけでなく、
補助金の交付決定も交付も民間企業を通して行っているケースもあります。
民間企業が窓口になっていても補助金の原資が官公署の予算で、
交付決定通知書の差出人が官公署だと民間企業の補助金事業ではないのです。
普通に申請すれば補助金が受けられたのに、違法な代行サービスを利用したために
補助金が受けられなかったではシャレになりません。
補助金が受けられるチャンスを無駄にしないためにも、
補助金事業や申請に関する正しい知識を身に付けておきましょう。
無償を装った補助金申請代行サービスには要注意
無償であれば行政書士以外でも補助金申請の書類作成や提出を代行することが
可能ですが、無償でも行政書士法違反となることもあるので注意が必要です。
補助金申請代行サービスを行っている事業者の中には、
無償を装って実質的には有償でサービスを提供していることがあります。
例えば代行サービス自体は無料で利用できるものの、
別途「コンサルタント料」や「相談料」などの名目で料金を受け取るケースです。
実際にコンサルティングや相談に対する対価であっても、
無償で行った代行サービスとは全く関係が無いことが証明できないとアウトとなります。
目に見える商品があるならともかく無形のサービスではどこまでが料金に
含まれているかを証明することが難しいです。
コンサルティングや相談が有償で申請代行サービスは無償が事実であっても、
金銭の受け渡しがある以上は申請代行サービスも有償とみなされる可能性が大です。
継続してサービスを提供すると無償でも行政書士法違反
コンサルタント料など別名目でも料金を受け取らずに完全に無償で
補助金申請代行サービスを提供していても繰り返し行うとアウトの恐れがあります。
個人として知り合いの会社やお店数軒の補助金申請を無償で代行した場合は、
継続していても個人なので行政書士法違反にはなりません。
しかし事業者として継続して無償で補助金申請の代行サービスを提供すると、
これは無償でも行政書士法違反と見なされる恐れがあるのです。
総務省の公式見解により補助金申請代行のグレーゾーンは解消されつつある
これまで補助金申請代行サービスにはグレーゾーンが存在しており、
実際には行政書士法違反になるケースが見逃されることもありました。
しかし事業再構築補助金など官公署が実施する補助金・助成金・給付金の申請で
不正が横行してきたことで総務省が補助金申請代行に関する公式見解を発表しました。
2022年2月の総務省見解では、先に紹介した通り有償で補助金申請の代行が
できるのは基本的に行政書士のみとなっています。
行政書士以外の事業者が補助金申請に関わるサービスを提供する場合は、
・補助金申請に関する相談
・書類作成についてのアドバイスや添削
といったサービス内容に留めるべきという見解も示されています。
総務省が補助金申請に関する公式見解を発表したことで、
これまでグレーゾーンだった申請代行サービスに明確な線引きがされました。
明確な線引きがされたことによって、
行政書士が関わらない補助金の申請代行サービスは無くなっていくはずです。
ただ現状は過渡期であり、総務省の公式見解に沿わない事業者が残っているので
申請代行サービスを利用する場合には注意しなければいけません。
行政書士は補助金申請の専門家
補助金申請について相談するのであれば専門家である行政書士がベターです。
補助金の事業主体でない官公署に知り合いが居るならそちらに相談しても良いですが、
都合良く官公署に知り合いが居るとは限りません。
官公署に知り合いが居たとしても、補助金や助成金などの申請事業に関わったことが
無ければ大したアドバイスは貰えない可能性が高いです。
その点行政書士は補助金申請のプロですから、
代行を依頼しなくても相談だけでも有益なアドバイスが貰えます。
申請の相談から書類の作成・提出まで任せられる
行政書士であれば補助金申請に関する相談だけでなく、
申請書類の作成と提出の代行までお任せできます。
丸投げとまでは言わないものの、補助金申請の手続きの大部分を申請者に代わって
行政書士に行ってもらうことが可能なのです。
実際に補助金や助成金など官公署が実施する事業を利用すると分かりますが、
必要書類が多い上に書類の書き方も細かいところまで決まっています。
申請に必要な書類を揃えて書式に則って作成するだけでも、
補助金申請の経験が無いとかなりの時間を要してしまいます。
官公署の補助金事業は公示から締切までの期間が短いことも多く、
仕事の片手間に準備していては間に合わないことも多いのです。
多少お金はかかりますが、締切に間に合うように申請を行うなら専門家である
行政書士の力を借りるのがおすすめです。
補助金申請が採択される可能性が高くなる
100%確実というわけではないですが、
行政書士に依頼することで補助金申請が採択される可能性が高くなります。
補助金申請を得意とする行政書士は過去に何度も色んな種類の補助金申請を
代行してきています。
要するに補助金申請の経験が豊富なので、
・何を書けば良いのか
・どういった書き方をすれば良いか
・ヒアリングではどんな受け答えをするのか
など補助金の種類ごとに採択されやすいポイントが分かっているのです。
ポイントを押さえた申請書類の書き方やヒアリングでの受け答えができますから、
当然補助金申請が採択される可能性が高くなるというわけです。
補助金の交付額が増える可能性も
行政書士に補助金申請を代行してもらうことで、
補助金の交付額が増える可能性もあります。
官公署の補助金は交付額が一定ではなく、
申請した内容に応じて最大いくらまでという形で交付額が変わるケースが多いです。
また実施した事業に対して補助金が交付されるのが一般的で、
補助金の趣旨に沿った事業を実施する必要があります。
専門家である行政書士は事業ごとに使える補助金を把握していますから、
複数の補助金制度を利用することで交付額を増やすことも可能なわけです。
国や自治体それぞれに補助金制度があり、どの事業がどの補助金に使えるのかを
把握するのは素人には簡単ではありません。
行政書士に頼らないと貰えるはずの補助金を貰い損ねる恐れもあるので、
補助金の申請は行政書士に頼った方が良いわけです。
補助金申請を行政書士に代行してもらう場合の費用
補助金申請代行を行政書士に依頼すると、補助金申請そのものにかかる費用
いわゆる法定費用とは別に行政書士に報酬を支払わないといけません。
行政書士は基本的に自由報酬で、個々の行政書士が自由に報酬を決められますから
補助金申請の報酬相場がいくらかは分かりにくいです。
ただ日本行政書士会連合会が5年に1度報酬についての調査を行っており、
直近では2020年に調査が行われています。
その調査結果によると、補助金申請代行の報酬は平均で103,098円、
最頻値が55,000円となっています。
安い報酬で請け負ってくれる行政書士も少なくないものの、補助金申請を行政書士に
代行してもらうには10万円ぐらいはかかると思っておいた方が良いでしょう。
「10万円も!?」と思うかもしれませんが、行政書士以外の申請代行サービスでは
せいぜい申請書類の作成についてのアドバイスぐらいしかしてもらえません。
申請者に代わって必要書類を作成して提出するところまで代行できるのは
行政書士だけですから、10万円でも決して高くはないのです。
補助金申請代行を依頼する行政書士選びは慎重に
行政書士は補助金申請代行が可能ですが、
全国の行政書士全員が補助金申請代行が得意というわけではありません。
行政書士の独占業務は各種許認可申請だけで1万種類以上あると言われており、
全ての独占業務を完璧にこなせる行政書士はほとんど居ないのです。
それぞれに取り扱い分野が決まっており、
中には補助金申請を取り扱っていない行政書士も少なからず居ます。
ビジネス街に事務所を構えていれば補助金申請を取り扱っているとは思いますが、
補助金申請代行を依頼する行政書士は慎重に選ばないといけません。
最近はホームページを開設している行政書士も多く、
ホームページで取り扱う分野が確認できます。
同じ行政書士でも補助金申請の経験が豊富な方がより採択される可能性が高く、
より交付額が大きくなる可能性が高いです。
まとめ
補助金申請の代行は行政書士の独占業務であり、
有償で申請書類の作成や提出を代行できるのは行政書士だけです。
行政書士以外が有償で補助金申請を代行すると行政書士法違反となり、
1年以下の懲役または100万円以下の罰金という軽くない刑罰が科せられます。
2022年2月に発表された総務省の公式見解により補助金申請代行サービスに
明確な線引きがされたので、サービスを利用する側のモラルも問われます。
補助金申請代行サービスが違法かどうかを見分けるのは難しいので、
補助金申請については行政書士に相談するのがおすすめですよ。