こんにちは、洋平です。
建築現場や工事現場などで排出される「産業廃棄物」を最終処分する前に、
焼却や破砕などを行う中間処理を行うにも許可が必要です。
許可申請を行政書士に依頼した場合の報酬など
産廃の中間処理について詳しく見ていきましょう。
産廃中間処理許可申請を行政書士に依頼したらいくらかかる?
産廃の中間処理業を営むのに必要な許可を受けるのはハードルが高いと言われており、
許可申請は行政書士に依頼するのが一般的となっています。
行政書士に産廃中間処理の許可申請を依頼した場合の報酬相場は
10~50万円といったところです。
行政書士の報酬に規定は無いので相場を探ることが難しいのですが、
今回は日本行政書士会連合会の報酬に関する調査の結果を参考にしています。
日本行政書士会連合会の調査結果によると、中間処理許可を新規で申請する際の
報酬は平均で658,703円、最頻値で150,000円となっています。
15~30万円の間に設定している行政書士が多いものの、
60万円以上の行政書士も少なくありません。
行政書士によってバラつきがあるため、最頻値は15万円と比較的低めなのに
平均では60万円を超える高額となっているわけです。
更新や変更の申請で発生する報酬
中間処理に限らず産廃処分業許可は5年ごとの更新が必要で、
更新申請を行政書士に依頼した場合の報酬相場は10~20万円といったところです。
日本行政書士会連合会の調査結果によると、更新申請の報酬の平均は193,694円で
最頻値が100,000円と300,000円となっています。
新規申請に比べると更新申請はバラつきが少なく、
10~20万円の間で報酬を設定している行政書士が多いです。
一度受けた許可の内容を変更する場合にも申請が必要で、
それを行政書士に依頼するには大体30万円ぐらいの報酬が必要です。
日本行政書士会連合会の調査結果では変更申請の報酬は平均で375,311円、
最頻値が200,000円と550,000円となっています。
変更申請も報酬もバラつきが多く、10万円以下の行政書士も多い反面
50万円以上に設定している行政書士も少なくありません。
産廃処理場の設置にも許可が必要
産廃の中間処理業を営むには焼却や破砕などを行う処理場の設置にも
許可を取らないといけないケースがあります。
詳しい条件は後述しますが、
産廃の種類や処理方法、規模によって処理場設置にも許可が必要となります。
処理場設置の許可申請を行政書士に依頼した場合の報酬相場は
大体30~40万といったところです。
日本行政書士会連合会の調査結果によると、処理場設置許可申請の報酬は
平均で347,938円、最頻値で220,000円となっています。
中間処理業の許可申請と同様に行政書士によって報酬のバラつきが多く、
10万円で受けてくれる行政書士も居れば100万円かかる行政書士も居ます。
処理場の規模や施設などを変更する場合には変更申請が必要で、
行政書士に依頼した場合の報酬相場は大体25万円前後です。
日本行政書士会連合会の調査結果によると、処理場の変更申請の報酬は
平均で248,592円、最頻値で300,000円となっています。
設置許可に比べるとバラつきは小さくて大体20~25万円の間、
高くても30万円までで収まるケースが多いです。
産廃中間処理許可申請には法定費用もかかる
産廃中間処理の許可申請は処理場を設置する自治体に対して行うので、
行政書士の報酬とは別に手数料などの法定費用が発生します。
法定費用は自治体ごとに違っていますが、
・新規申請 10万円
・更新、変更 9万円
・処理場設置許可 12万円
ぐらいが法定費用の相場です。
種類に関わらず産廃中間処理に関する申請を行う場合には、
行政書士の報酬プラス10万円程度の費用がかかると思っておきましょう。
産廃の中間処理とは
建築現場や工事現場などから出る産廃は最終的に埋立や海洋廃棄による処分が
行われますが、その前に中間処理を行います。
産廃をそのまま廃棄するのではなく中間処理を行うのには
・安全化
・安定化
・減量化
の3つの目的があるのです。
産廃の中には有害な物質が含まれている物もあり、
そのまま廃棄すると土壌や海洋の汚染に繋がってしまいます。
埋立や海洋廃棄をしても環境汚染が起こらないように無毒化して「安全化」するのが
中間処理の目的の1つです。
汚泥のような液状の産廃や煤塵のような粉状の産廃は、
他の物質と混ざることで性質が変化する恐れがあります。
埋立や海洋廃棄で処分した後に性質が変化して環境汚染に繋がらないよう、
液状や粉状の産廃は中間処理で固めて「安定化」させるのです。
埋立や海洋廃棄で処分される産廃の量は少ないに越したはありませんから、
粉砕や脱水などの中間処理を施して「減量化」を行います。
最近は産廃の選別をして再利用可能な物はリサイクルに回して減量化を図るケースが
多くなっています。
主な中間処理方法
産廃の主な中間処理方法としては
・焼却
・粉砕
・溶融
・脱水
・選別
などが挙げられます。
「焼却」は燃やせる産廃を燃やして燃え殻や灰にして重量や体積を減らす減量化を
目的とした処理方法です。
「粉砕」は砕いたり潰したりする処理方法で、
体積の大きな産廃の嵩を小さくする目的で行われます。
産廃の素材によってはリサイクルしやすいように粉砕するケースもあります。
「溶融」は高温で溶かす処理方法で、焼却されて出た燃え殻や灰をさらに溶かして
減量化させるケースが多いです。
高温で物質を溶かすと有機物は燃え尽きてガラス状の無機物だけが残りますが、
残ったガラス状の無機物は砕石や砂利などの路盤材の原料としてリサイクルされます。
「脱水」は汚泥など液状の産廃から水分を取り除く処理方法で、
水分を取り除くことで体積と重量を減らす減量化を目的としています。
「選別」はまとめて運ばれてきた産廃をリサイクルできる物とできない物に分ける
処理方法です。
リサイクルできる産廃を分けておくことで、最終的に処分される産廃の量を減らせます。
設置許可が必要な処理場の条件
産廃の中間処理を行うには処理場が必要ですが、
条件次第では処理場の設置自体にも許可申請をしなければいけません。
例えば
・有害物質を含む
・水銀やその化合物を含む
・シアン化合物を含む
・石綿もしくは石綿を含む
・PCBもしくはPCBを含む
などの特定産廃を取り扱う中間処理場は規模や能力に関わらず設置に許可申請が
必要です。
有害な物質や特定の物質を含まない産廃の中間処理場が
・汚泥の脱水、乾燥施設 1日当たり10?以上
・焼却施設 1時間当たり200kg以上もしくは火格子面積2㎡以上
・中和施設 1日当たり50?以上
・破砕施設 1日当たり5t以上
などの規模、能力を有する場合には設置の許可申請を行わないといけません。
他社から産廃の中間処理を請け負う請け負わない関係無く、
一定の規模や能力を有する処理場を設置するには許可必要となります。
許可の有無に関わらず処理場の設置には周辺の同意や説明会が必要
一定の規模、能力を有する処理場の設置には自治体の許可が必要ですが、
一定の規模、能力を有しない処理場の設置も自由にできるわけではありません。
中間処理場の設置には周辺の土地所有者の同意書か周辺住民への説明会開催が
必要なのです。
産廃の中間処理場は必要不可欠な施設ではあるものの、
処理場が設置される周辺住民にとってはあまりありがたい施設とは言えません。
中間処理場のような重要だけど近所にあるとありがたく思われない施設の設置には、
事前に周辺住民の同意・納得を得ないといけないわけです。
同意書が必要な範囲や説明会の開催期間は自治体や処理場の規模や種類によって
様々ですが、決して低いハードルではありません。
処理場の設置予定場所を中心に半径200m以内の土地所有者の同意書が必要と
なると、かなり条件としては厳しいです。
説明会にしても、周辺住民の大多数を納得させるためには数か月に渡って繰り返し
開催することになります。
同意書にしろ説明会にしろ低いハードルではないので、
中間処理場を設置する際には事前の入念な調査と準備が必要なのです。
産廃中間処理許可申請は誰でもできるわけではない
中間処理に限らず産廃を取り扱う許可申請は誰でもできるわけではありません。
産業廃棄物処分業許可を申請するには、申請者本人や出資者、
法人の場合は役員や株主が欠格事由に該当していないことが条件となります。
産廃処分業許可の欠格事由は以下の通りです。
・反社会的勢力に現在所属しているもしくは5年以内に所属していた
・法人の事業活動を反社会的勢力が支配している
・成年被後見人、被保佐人または復権していない破産者
・禁固以上の刑罰を受けて執行終了、執行猶予終了から5年以内
・特定の法律違反で罰金以上の刑罰を受けて執行終了、執行猶予終了から5年以内
・産廃処分業許可の取り消し処分を受けてから5年以内
・産廃処分業許可の取り消し通知を受けて自主廃業して5年以内
「特定の法律」には廃棄物処理法や浄化槽法など産廃処分に関連する法律や
反社会的勢力に関する法律、さらに刑法の一部が該当します。
申請者本人が先の欠格事由に当てはまる場合はもちろん、
産廃処分業の出資者が当てはまる場合も産廃処分業許可申請はできません。
法人の場合は申請者本人に加えて役員・株主に欠格事由該当者が居ると申請しても
許可が下りることは無いです。
自分自身が欠格事由に該当しているか否かは調べるまでもありませんが、出資者や
役員、株主は欠格事由に該当していないかしっかりチェックしておくことが必要です。
産廃処分業に関する講習を受講しなければならない
先の欠格事由に該当していないというハードルをクリアしたら、
次は産廃処分業に関する講習受講のハードルを超えないといけません。
日本産業廃棄物処理振興センターが実施している産業廃棄物または
特別管理産業廃棄物処分に関する講習を受けないと許可申請ができないのです。
個人の場合は申請者、法人の場合は代表者か産廃処分業務を行う役員
(監査役・相談役・顧問・執行役員はダメ)の1人が受講していればOKです。
産廃処分に関する講習修了は5年間有効なので、
申請日から起算して5年前までに受講していれば直近でなくても構いません。
ただし産廃処分業許可更新の際にも受講修了が必須ですから、
産廃中間処理業を営み続ける限りは5年ごとに受講することになります。
技術管理者と産業廃棄物管理責任者の確保
産廃処分業許可を申請するには「技術管理者」と「産業廃棄物管理責任者」を事前に
確保するもしくは開業までに確保できる見込みであることが必要です。
産業廃棄物管理責任者は特に資格は必要ありませんし技術管理者が兼務可能です。
技術管理者は廃棄物処理法に規定されている要件を満たしていなければならず、
誰でも良いわけではありません。
技術管理者の要件は
・化学、上下水道、衛生工学のいずれかの部門の技術士
・上記以外の部門の技術士で1年以上の実務経験あり
・環境衛生指導員の実務経験2年以上
・大学で理学・薬学・工学・農学を専攻して衛生工学と化学工学を修了
+実務経験2年以上
・大学で理学・薬学・工学・農学を専攻して衛生工学と化学工学以外を修了
+実務経験3年以上
・短大または高専で理学・薬学・工学・農学を専攻して衛生工学と化学工学を修了
+実務経験4年以上
(衛生工学と化学工学以外を修了の場合は実務経験5年以上が必要)
・高校で土木科・化学化を修了+実務経験6年以上
・高校で理学・工学・農学を修了+実務経験7年以上
・廃棄物処理施設技術管理者講習修了
の9つで、いずれか1つに該当していれば技術管理者になれます。
技術管理者は産廃処分業における中心人物ですから、
できれば実務経験のある人を選任するのがベターです。
実務経験のある人の確保が難しい場合は、
廃棄物処理施設技術管理者講習を受講するようにしましょう。
産廃中間処理業の許可申請には年単位の時間がかかる
国や自治体の許可申請は全体に時間がかかる傾向にありますが、
産廃中間処理業など産廃処分業許可は特に時間がかかります。
申請してから許可が下りるまでに数か月、
申請までの準備期間を含めると年単位の時間がかかるのです。
特に処理場の設置に時間がかかり、
設置許可の申請が不要な場合でも1年以上はかかってしまいます。
全ての手続きがスムーズにいっても1年程度、
スムーズにいかない場合には2年3年かかることも少なくありません。
許可が下りないと産廃処分業を営めないので、許可が下りるまでの1年以上は
産廃処分業以外の事業で個人の生活や会社経営を成り立たせる必要があります。
産廃処分業以外で少なくとも2~3年は事業が継続できる目途が立ってから
産廃処分業の許可申請を行うようにしましょう。
まとめ
産業廃棄物の中間処理業の許可申請を行政書士に依頼すると10~50万円という
費用が法定費用とは別にかかります。
行政書士の報酬は安くないですが産廃関連の許可申請はハードルが非常に高く、
手間も時間もかかるので行政書士の協力が必須です。
ただ産廃関連の手続きを得意とする行政書士はそれほど多くないため、
産廃中間処理業の許可申請を行う場合には行政書士選びも重要ですよ。