こんにちは、洋平です。
観光客や労働者として外国人の受け入れが拡大されたことに伴って入管業務や
入管業務を取り扱う行政書士の需要が高まっています。
今回は行政書士にとって儲かる業務なのかなど、
行政書士の入管業務について詳しく見ていきましょう。
行政書士の入管業務とは
行政書士が行う入管業務とは、
外国人が法律に違反しない形で日本に滞在できるようにサポートする業務のことです。
在留資格いわゆるビザの取得や更新、変更などの手続きに必要な書類を作成して
入国管理局に提出するのが主な行政書士の業務となります。
入管業務は行政書士の独占業務であり、たくさんある士業の中でも行政書士と
オールマイティな士業である弁護士にしかできません。
ビザの取得で最も件数が多いのは日本への観光や出張が目的の短期滞在です。
ただ観光やビジネスが目的の短期滞在では企業が入管手続きを行うことが多く、
行政書士が出る幕はあまりありません。
行政書士が関わるのは主に就労や結婚、起業などで長期間日本に滞在する
あるいは永住するための在留資格の取得や更新、変更です。
外国人の在留資格だけで33種類あり、それぞれに取得・変更・更新の手続きが
あるので100種類ぐらいの入管業務があります。
行政書士資格だけでは入管業務はできない
入管業務は行政書士の独占業務ではありますが、
行政書士資格を持っているだけでは入管業務は行えません。
入管業務を行うには「申請取次行政書士」の資格が必要なのです。
行政書士資格とは全く別の資格というわけではなく、行政書士が申請取次に関する
研修を受けて効果測定(試験)に合格すれば取得できる資格です。
試験と言っても入管法についての基本的な問題が10問出されるだけで、
研修終了後の試験なので研修をしっかり受けていればパスできます。
申請取次の研修は定期的に行われているものの2~3か月に1回程度なので、
日本行政書士会連合会のホームページなどで日程を確認してください。
研修を受けるには大体3万円ほどの費用が必要で、3年ごとに更新する形になります。
申請取次の資格を持っていないと、入管手続きに必要な書類の作成はできるものの
入国管理局に書類を提出ことができません。
また書類の作成についても報酬を得る目的で行うと行政書士法に触れる恐れが
あります。
入管業務を一切行う気が無いなら不要ですが、
入管業務を行う可能性が少しでもあるなら申請取次の資格を取得しておきましょう。
行政書士ができるのは取次だけ
入管業務に関しては行政書士や弁護士ができるのは申請取次だけで
本人に代わって申請を行うことはできません。
在留資格の取得申請など入管手続きは本人が行うのが原則となっており、
第三者が代理で行うことは認められていないのです。
行政書士ができるのは入管手続きに必要な書類を作成して入国管理局に
提出することだけです。
もし書類に不備があって資格が取得できないとなった場合でも、
その場で書類を作り直したり差し替えたりといったことはできません。
入管業務は儲かる?
行政書士にとって入管業務が儲かる仕事かどうかですが、
入管業務単体で考えるとあまり儲かる仕事とは言えません。
日本行政書士会連合会が5年ごとに実施している報酬に関する調査によると、
新規の在留資格交付申請の報酬相場は10万円前後となっています。
具体的には以下の通りです。
・居住資格 平均112,372円 最頻値100,000円
・就労資格 平均113,881円 最頻値100,000円
・非就労資格 平均101,557円 最頻値100,000円
・経営・管理資格 183,929円 最頻値150,000円
在留資格の内容を変更する場合も大体10万円前後、
更新は5万円前後が行政書士の受け取れる報酬の相場となっています。
一部更新が不要な在留資格もありますが、
長期間の滞在を目的とした在留資格は1~5年で更新が必要なケースがほとんどです。
更新まで請け負えたとしても新規取得の際に10万円、
更新のたびに5万円の報酬では正直儲かるとは言えません。
ただ1件1件の入管業務で考えると儲かるとは言えませんが、
数件まとめて請け負えるとそれなりに儲かる仕事となります。
外国人が居住や就労を目的として日本に来る場合、
既に日本に居る同じ国出身者のコミュニティを頼るケースが多いです。
外国人コミュニティと繋がりを持っておくと在留資格の新規取得や更新の依頼が
ある程度まとめて入ってくることが期待できます。
1件1件の報酬が多くなくてもある程度数がまとまると報酬も増えますから、
行政書士にとって入管業務はスケールメリットがある仕事と言えるのです。
入管業務は今後成長が期待できる分野
入管業務は行政書士にとって今後成長が期待できる分野です。
少子高齢化が急速に進み、その上団塊の世代が定年を迎える年代となったことで
日本では労働力が不足してきています。
出生率を上げて将来の労働力を増やすことが最大の目標ではあるものの、
当面の労働力不足を補うためには外国人を受け入れざるをえません。
実際に日本政府も労働力としての外国人の受け入れを拡大する方針を示しており、
今後就労目的で日本に来る外国人が増える可能性が高いです。
日本に来る外国人が増えると入管業務のニーズも増えますから、
必然的に行政書士の需要も高まるというわけです。
現状行政書士は全国に個人・法人合わせて5万人以上居て、
競争を勝ち抜かないことには行政書士として生き残れません。
行政書士として生き残るには差別化が重要で、
他の行政書士と差別化して生き残るには入管業務を取り扱うのも1つの方法です。
入管業務を行うのに英語は必須?
行政書士として入管業務を行うのであれば英語ができるに越したことはないですが
必須というほどではありません。
自分が留学や就労を目的として渡航する場合、
事前に現地の言葉を話したり聞き取れるように勉強しますよね。
また就労目的で日本に入国する場合には、日常会話程度の日本語が話せない
聞き取れないことには入管手続きをしてもビザが発給されない可能性が高いのです。
日本語で日常会話ができることがビザ発給の条件となっているので、
長期滞在目的で日本に来る外国人は事前に日本語を勉強しています。
入管手続きの書類作成に必要な情報を聞き出すヒアリングも日本語でできる可能性が
高いので、入管業務に英語が必須とまでは言えないわけです。
日本人と国際結婚して日本で生活するために配偶者ビザを取得するといった場合には、
ビザを申請する本人が全く日本語を話せないケースもあります。
ただこのケースは申請する本人と配偶者である日本人がコミュニケーションを
取れるはずなので、配偶者である日本人に通訳してもらえば問題ありません。
できれば英語が話せる方が良い
就労などの目的で日本に来る外国人はある程度日本語が話せる、日本語が
話せない場合でも通訳が居れば問題無いとしてもやはり英語が話せる方がベターです。
ある程度日本語が話せても、入管手続きに必要な情報を聞き出す際に
こちらの話していることが十分に理解できないことも考えられます。
通訳が居ても日本語と英語のニュアンスの違いで、
こちらの言いたいことが外国人本人にしっかり伝わらないこともあるのです。
不慣れな日本語よりも使い慣れた英語の方がこちらの言いたいことが
外国人に伝わりやすいわけです。
ある程度英語が話せるようになってから海外旅行に行ったとしても、
現地のホテルや飲食店に日本語が話せるスタッフが居るとホッとしますよね。
日本という異国の地で働くのに必要なビザの取得をサポートしてくれる行政書士が
母国語で話してくれたら外国人もホッとするのは同じなのです。
入管手続きでは書類に不備があるとその場で修正や作り直し、差し替えができません。
100%完全な書類を作成するには申請する外国人本人と十分にコミュニケーションを
取る必要があるので、行政書士は英語を話せる方が良いのです。
差別化を図るなら英語以外の言語を話せるようにする
入管業務を扱う行政書士で英語が話せるケースは多いでしょうから、
差別化を図るのであれば英語以外の言語を話せるようにしておくのも1つの方法です。
現在日本で働いている外国人は
・中国
・ベトナム
・フィリピン
など東アジア、東南アジアの出身者が全体の半数以上を占めています。
今後就労目的で日本に来る外国人も恐らくは東アジアや東南アジアの出身者が
中心となる可能性が高いです。
東アジアや東南アジアから就労目的で日本に来る人が多いとなれば、東アジアや
東南アジアの言葉が話せる聞き取れる行政書士にはアドバンテージが生まれます。
フィリピンは大半の国民が英語を話せるので英語で対応できますが、
中国は中国語、ベトナムはベトナム語が話せると対応がスムーズにできます。
近々中国を抜いて人口が世界一になるインドからの流入が増えることも
十分に考えられるのでヒンディー語やウルドゥー語などを学ぶの良いかもしれません。
英語を話せる行政書士は多くても特定の国や地域の言葉を話せる行政書士は
それほど多くないです。
今後入管業務を扱う行政書士で生き残っていくのは、
東アジアや東南アジアの言語が話せる行政書士かもしれないですね。
入管業務には危険も潜んでいる
入管業務は行政書士にとっては成長分野ではあるものの、
同時に大きな危険が潜んでいる分野でもあります。
1つは「日本と諸外国との文化の違い」から発生するトラブルに巻き込まれる
危険性です。
日本の入管業務は世界的に見てもかなり厳格で、
手続きの際に1つでも申告漏れやミスがあるとビザが取得できません。
ビザ取得後に申告漏れなどが発覚した場合には、
最悪だとビザが取り消されて強制退去となってしまいます。
ところが諸外国の中には、お金さえ払えばほとんど手続きせずに正規ルートで
ビザが取得できてしまうところもあるのだとか。
こうした文化や考え方の違いから
・自分の国ではこうしている
・友達はこの方法でビザが取れた
など日本では通用しない方法でビザを取るように迫ってくる外国人も居ます。
無理やりビザを取るように迫る外国人の要求を無下に断ると、
外国人のコミュニティや支援団体との間でトラブルが発生してしまうことがあるのです。
行政書士として入管業務を行うのであれば、外国人は基本的に文化や考え方、
倫理観などが全く違うということを頭に入れておかないといけません。
その上で無理な要求をしてくる外国人には日本の文化や考え方、倫理観などを
丁寧に説明して正しい方法での手続きを勧めるか要求を断るようにしましょう。
外国の文化や考え方、倫理観などを理解するという点においても、
外国語を学んでおくことはプラスになります。
映画のような悪徳ブローカーも存在する
刑事ものの映画やドラマを見ていると、不正な方法で外国人のビザを取得して
不法に就労させる悪徳ブローカーが出てくることがあります。
映画やドラマはもちろん創作ですが、
実際に不正な方法でビザを取得する悪徳ブローカーは存在しているのです。
特に新人の行政書士はこうした悪徳ブローカーに狙われやすく、
高額な報酬と甘い言葉でビザの不正取得に協力するよう唆してきます。
過去にビザ取得した外国人の申請書類の名前の部分だけを入れ替えて
入国管理局に提出させるといった方法でビザを不正取得するケースがあります。
本来の入管手続きには膨大な書類が必要ですが、
名前を入れ替えるだけなら簡単ですし数をまとめて申請することも可能です。
簡単な作業で1件あたり10万円程度の通常の報酬が貰えるとなれば、
行政書士としてはかなりオイシイ仕事です。
開業したばかりで経営が軌道に乗っていない行政書士だと、こうした悪徳ブローカーの
甘い言葉に惹かれてしまう恐れがあるので注意しなければいけませんよ。
悪徳ブローカーは「人出不足で困っている」「今回だけ人助けだと思って」など
行政書士の親切心をくすぐる言葉で唆してきます。
しかし1度でも協力してしまうと、後ろめたさから断れずにズルズルと
悪徳ブローカーに協力し続けてしまうことになるのです。
過去には悪徳ブローカーに協力したことで、
外国人の不正就労の片棒を担いだとして罪に問われた行政書士も居ます。
罪に問われないまでも、日本行政書士会連合会から懲戒処分を受けて
一時的に資格を停止された行政書士は少なくありません。
入管業務は日本で働きたい・居住したい外国人のサポートをする仕事であり、
日本国にとっても外国人にとっても必要でやりがいのある仕事です。
ただ行政書士のやりがいや親切心を逆手に取って不正に協力させようとする
悪徳ブローカーも居るので、入管業務を行うには注意も必要なのです。
まとめ
行政書士にとって入管業務は個別には儲かる仕事ではありませんが、
ある程度まとまった数をこなすことで儲けることは可能です。
今後外国人労働者の数が増えるのは確実で、
入管業務を扱う行政書士の需要が高まることも間違いありません。
ただ入管業務には場合によっては行政書士として仕事ができなくなってしまう危険も
潜んでいるので注意が必要です。
できれば英語を含めた外国語が話せる方が有利ですし、
入管業務を扱うなら事前にしっかりと準備しておいた方が良いですよ。