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行政書士の事務所としてコワーキングスペースはアリ?

こんにちは、洋平です。

今回は、行政書士の事務所として「コワーキングスペース」が使えるのかについて
お話ししていきます。

行政書士の事務所にコワーキングスペースは使える?

まず行政書士の事務所にコワーキングスペースが使えるかどうかですが、
厳密に言うと「使えません」。

コワーキングは、「共同の」とか「共通の」という意味を持つ「Co」と
働くという意味の「Working」が合わさった言葉です。

ちなみに、
ゴルフ中継を見ていると1位タイの選手が「Co-Leader」となっていることがあります。

この「Co-Leader」の「Co」とコワーキングスペースの「Co」は同じ意味です。

ですからコワーキングスペースを日本語に直訳すると、
「共同で働く場所」といった感じになります。

コワーキングスペースは図書館のようなオープンスペースで、
テーブルやデスクごとに分かれて作業や実務を行うようになっているんです。

パテーションのようなもので仕切られていることはあるものの、
コワーキングスペースでは完全に仕切られた個室は基本的にはありません。

詳しくは後述しますが、実は行政書士の事務所には「個室」が必要で、
個室の無い物件を事務所として登録することはできないんです。

ですからコワーキングスペースを行政書士の事務所として使うことは、
厳密にできないことになるわけです。

個室のあるコワーキングスペースならOK

個室のあるコワーキングスペースであれば、
行政書士の事務所として使うことは可能です。

実際に、個室のあるコワーキングスペースを事務所として開業した行政書士の方も
いらっしゃいます。

ただ厳密に「コワーキングスペース」と言われる物件には個室はありません。

個室のあるコワーキングスペースのような物件は、
本来は「シェアオフィス」や「レンタルオフィス」と言われるものです。

しかし現状の日本では、コワーキングスペース・シェアオフィス・レンタルオフィスが
明確に区別されていません。

ですから物件を提供する側が「コワーキングスペース」と言えば、
たとえ個室があってもコワーキングスペースとなります。

本来はシェアオフィスやレンタルオフィスに相当する、
個室のあるコワーキングスペースなら行政書士の事務所として使うことは可能です。

行政書士の事務所に求められる要件

行政書士の事務所にはいくつか求められる要件があります。

その要件を全て満たした物件でないと、
行政書士の事務所として登録することができないんです。

厳密な意味でのコワーキングスペースは求められる要件を満たしていないので、
行政書士の事務所として使えないわけです。

では行政書士の事務所に求められる要件とはどんなものなんでしょうか?

行政書士の事務所に求められる要件としては
 1.使用権原が適正であること
 2.事務所としての設備が整っていること
 3.秘密が保持できる環境であること
の3つが挙げられます。

多くのコワーキングスペースは、
3の「秘密が保持できる環境であること」を満たせていません。

使用権原が適正である

1の「使用権原が適正であること」は、簡単に言うと「所有者が物件を
行政書士事務所として使うことを認めている」ということです。

持ち家の一軒家で所有者が自分であれば、
行政書士事務所としての使用権原は適正であると認められます。

しかし所有者が自分以外の家族となると、所有者である家族の承諾が必要となります。

マンションなど共同住宅も、分譲だったら基本的には使用権原に問題はありません。

ただし共同住宅では、
規約などで「居住目的以外の利用」が禁止されていることがあります。

その場合は、たとえ分譲であっても建物自体の所有者や管理会社の承諾を得ないと
いけないんです。

一軒家でも共同住宅でも賃貸だと、当然所有者や管理会社に
「行政書士事務所として使うこと」を承諾してもらう必要があります。

コワーキングスペースは基本的に「働く場所」として提供されているので、
「行政書士事務所として使うこと」を承諾してもらうのは難しくありません。

居住目的以外禁止の共同住宅で事務所使用の承諾を得るには

居住以外の目的での利用が禁止になっている共同住宅で、
普通に「行政書士事務所として使いたい」と言っても所有者や管理会社は
承諾してくれない可能性が高いです。

こういう場合は、「行政書士事務所として登録するだけで、
業務は顧客の元に出向いて行う」などと説明すると良いですよ。

規約で「居住目的以外禁止」とするのは、
不特定多数の人が敷地内に出入りすることを嫌うからです。

実際に入居者じゃない人がたくさん共同住宅の敷地内をウロウロしてるのは、
入居者としては気持ちの良いものじゃありません。

共同住宅に事務所を構えている行政書士からすれば「顧客」でも、
他の入居者からすると「部外者」でしかないんですね。

なので「事務所として使うけど、不特定多数の人が出入りするわけじゃない」ということを
アピールすることで、所有者や管理会社に承諾してもらえる可能性が出てきます。

それでも「ダメ」と言われることもあるので、居住目的以外禁止の共同住宅の
事務所使用は「ダメ元」だと思っておいた方が良いでしょう。

事務所としての設備が整っている

2つ目の「事務所としての設備が整っていること」は、
「行政書士業務を行うのに必要な設備が事務所に揃っているかどうか」です。

事務所ですから、事務作業をするための「デスク」と「椅子」、
さらには書類作成や顧客データの保存などに使う「パソコン」。

顧客などとの連絡手段である「電話」や「FAX」、それから顧客から預かった書類や
役所などに提出する書類をコピーするための「コピー機」も必要です。

相談や依頼に来た顧客に応対する際に必要な「応接セット一式」、
和室なら「お膳」と「座布団」、洋室だったら「テーブル」と「椅子」ですね。

必要ではありませんが、顧客応対時にお茶やお茶請けが出せるように
コーヒーカップや湯飲み、お皿なんかも揃えておくと良いでしょう。

そして行政書士の事務所の設備としてもっとも重要と言って良いのが、
「鍵付きキャビネット」や「金庫」です。

行政書士の業務では、
住民票や戸籍謄本など顧客の個人情報が記載されている書類を取り扱います。

また顧客の代わりに行政手続きを行うこともあるので、
手続きに必要な手数料を顧客から預かったりもします。

それから、顧客の代わりに行政手続きを行うのに必要な「職務上請求書」も
行政書士の事務所にはあります。

そういった重要書類や預り金を「厳重に保管できる設備」が、
行政書士の事務所には求められるんです。

ですから、簡単に開けることができない鍵付きのキャビネットや金庫が必要になるというわけです。

どこに事務所を構えるにしても、
こういった必要な設備は行政書士自らが用意することになります。

なのでコワーキングスペースでも、開業する行政書士が必要な設備を調達して
持ち込めば良いだけなので問題ありません。

個人情報漏えいは行政書士にとって致命的

顧客から預かった個人情報を漏らすことは、行政書士にとっては「致命傷」となります。

法律上の罪に問われることはありませんが、
個人情報を漏らされた顧客に対する責任が発生します。

個人情報が漏れたことで顧客に何らかの損害が発生した場合には、
「損害賠償」を求められることもあるんです。

さらに「個人情報を漏らした行政書士」に誰も仕事を頼もうと思いませんから、
行政書士として立ち行かなくなってしまいます。

仕事の依頼が入らなければ必然的に「廃業」するしかなく、
情報漏えいは行政書士にとって致命傷となるわけです。

万が一にも顧客の情報が漏れることが無いように、
簡単に開けられない鍵付きキャビネットや金庫が必須なんですね。

秘密が保持できる環境

3つ目の「秘密が保持できる環境であること」が、
コワーキングスペースを行政書士の事務所として使えない最大の理由です。

行政書士は、「遺産分割協議書」「示談書」「内容証明」「告訴状」「上申書」
「会計帳簿」などの書類を顧客に代わって作成することができます。

それ以外にも、金融機関から融資を受ける際の
「借入申込書」や「事業計画書」なんかも作成したりします。

これらの書類作成をお願いする際には、行政書士と遺産や経理、事業計画などの
込み入った話をすることになります。

「別に聞かれたって問題無い」と思う顧客も居るかもしれませんが、
基本的には他の人に聞かれたくない話ですよね。

「他の人に聞かれたくない話」をするには、
中で話していることが外に聞こえないようになっている個室が必要となります。

この「中で話していることが外に聞こえないようになっている個室」が備わっていないと、
「秘密を保持できる環境である」とは認められません。

コワーキングスペースは、基本的にオープンスペースで、
せいぜいパテーションで仕切られている程度です。

これでは話している内容がコワーキングスペース内に居る他の人に聞こえますから、
コワーキングスペースは「秘密が保持できる環境」が整っていないと見なされます。

コワーキングスペースでも個室があって、なおかつ中の音が外に聞こえないように
なっていれば「秘密が保持できる環境」として認められます。

自宅を事務所として使う場合も注意が必要

行政書士開業時には、「自宅」を事務所として使うケースも多くなっています。

ただし自宅を行政書士の事務所として使う場合には、
それはそれで注意しないと行けないことがあります。

まず、自分や家族のプライベート空間である「居住部」と行政書士の業務を行う
「事務所」が分かれていないといけません。

例えば、リビングが広いからと言って、パテーションで区切って居住スペースと
事務所スペースを作るのではダメです。

リビングとは完全に別れている部屋に事務所を置く必要があり、
さらに顧客を話しをする「応接スペース」も独立して確保する必要があります。

ですから自宅を行政書士事務所として登録する場合には、
少なくともリビングを含めて3部屋以上が必要になるわけです。

それから、できれば郵便物も個人に送られてきたものと行政書士事務所宛てに送られてきたものを分けられるようにしておいた方が良いです。

もし全ての郵便物がごちゃ混ぜになると、事務所宛てに送られてきた郵便物を業務と
関係の無い家族が開けてしまう恐れがあります。

そうなると「秘密が保持できる環境」ではなくなってしまいますから、
郵便受けを2つ置くなどして郵便物を分けられるようにしておいた方が良いわけです。

行政書士の登録申請では事務所の現地調査が行われる

行政書士の登録申請を行うと、
事務所として使う物件が業務を行うのに相応しいかの「現地調査」が行われます。

ですから、コワーキングスペースのような要件を満たしていない物件を事務所として
登録申請しても、認められないんです。

「一行政書士一事務所」の原則があり、2つ以上事務所を構えることはできませんし、
他の行政書士事務所に雇われない限りは事務所を構える必要があります。

要件を満たさないコワーキングスペースを事務所として申請して登録が認められないと、
行政書士として仕事をすることもできません。

なので行政書士登録する際には、
全ての要件を満たした事務所となる物件を準備しておく必要がありますよ。

事務所の現地調査では何が見られる?

「現地調査」と言っても形式的なもので、
大まかに見るだけというケースも少なくありません。

しかし行政書士登録の際の現地調査は、形式的なものではなく、
ちゃんと事務所としての要件を満たしているかをチェックされます。

建物内に入って、「顧客の秘密が保持できる環境」になっているかどうかを確認します。

完全な防音設備までは求められないので、
応接スペースから多少声が漏れ聞こえる程度は見逃してもらえます。

しかし事務スペースと応接スペースが分かれていない、
自宅だったら居住スペースと事務所が分かれていないのは見逃してもらえません。

金庫など行政書士事務所に必要な設備については、
「後でしっかり揃える」ということで、調査時点で揃っていなくても問題にはならないです。

ただ調査に来ることが分かっているのに準備していないとなると、
調査員の心証を悪くする可能性があります。

なので、できれば現地調査までに必要なものは全て揃えておく方が良いでしょう。

現地調査を行うのは先輩行政書士

行政書士登録の際に現地調査を行うのは、
事務所を構える地域を統括する支部の役員で、その人たちも当然行政書士です。

ちなみに行政書士を統括する団体は「日本行政書士会連合会」で、
各都道府県に1つずつ「行政書士会」があります。

都道府県の行政書士会の下に、それぞれの地域を統括する支部があるんです。

行政書士登録は、
都道府県の行政書士会を通して日本行政書士会連合会に申請することになります。

ただ実務的には、日本行政書士会連合会よりも都道府県の行政書士会や
その下の支部にお世話になることが多いです。

そのため、現地調査に来る支部の役員とは今後も一緒に仕事をするなど
顔を合わせる機会が多くなるわけです。

行政書士は個人事業主ではありますが、
「横のつながり」で仕事をすることも少なくありません。

実際に支部から仕事を回してもらえることもありますし、
他の行政書士からの紹介で顧客が訪ねてくることもあります。

登録申請時の現地調査は行政書士として「横のつながり」を作る良い機会ですから、
必要なものはしっかりと揃えて心証を良くしておいた方が良いんですね。

また調査員と多少話をする時間もあるので、あらかじめ聞きたいことをまとめておいて、
現地調査の際に聞いておきましょう。

まとめ

一般的な業務を行う企業であれば、
コワーキングスペースを事務所として使うことに何の問題もありません。

しかし行政書士の業務では顧客の高度な個人情報を取り扱うため、
事務所は「秘密が保持できる環境」であることが必要です。

コワーキングスペースはオープンスペースで「秘密が保持できる環境」とは
言えないので、行政書士の事務所として使うことは難しいんですね。

ただコワーキングスペースの中には、レンタルオフィスのように
オープンスペースではなく個室が用意されているところもあります。

個室のあるコワーキングスペースであれば、
行政書士の事務所として使える可能性も出てきます。

あくまで「行政書士事務所に必要な要件を満たしていること」が重要なので、
事務所にする物件は設備等を事前にしっかりとチェックしておきましょう。

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