こんにちは、洋平です。
行政書士が不足している地域で開業すれば、
ライバルが少ないのでそれなりの収入が見込めそうに思いますよね。
実際に行政書士が不足している地域があるのか、不足している地域では行政書士に
何が求められているのかなどについて詳しく見ていきましょう。
行政書士が不足している地域はある
行政書士は全国に5万人以上居て、役所周辺に行けば行政書士事務所の看板が
至るところにあるので不足している地域は無いと思われがちです。
実際には行政書士を始めとして弁護士や司法書士、税理士などあらゆる士業が
不足している「司法過疎地域」があります。
海辺や山間で交通の便が良くない地域や冬は極寒で大雪が降るなど
自然環境が厳しい地域などが司法過疎地域となっているケースが多いです。
高齢化・過疎化が進んでいる地域や本土と簡単に行き来できない離島なども
司法過疎地域となりやすいです。
もっと具体的に言うと、寒さが厳しく高齢化・過疎化が進んでいる東北地方でも
田舎と言われるような地域、長崎や沖縄などの離島が司法過疎地域に当たります。
意外にも大都会の東京でも、小笠原諸島などの離島では行政書士を始めとした士業が
不足している地域が少なくありません。
行政書士は「人数が多すぎて仕事が無い」と言われることもありますが、
日本全国にはまだまだ行政書士を必要としている地域があるのです。
司法過疎地域とはどんなところ?
司法過疎地域は行政書士を始めとした士業が不足しているあるいは
士業が全く居ない地域のことです。
家庭裁判所や簡易裁判所の出張所があればまだ良い方で、
法律に絡む問題を相談できる機関が一切無い地域もあります。
一般的には、都会に比べて田舎はのんびりしていて住民同士の繋がりも強いので
行政書士に相談するようなトラブルが起きにくいイメージですよね。
元首相である大平正芳氏が「人が3人集まれば派閥が2つできる」と言ったように、
都会でも田舎でも人が複数居るとトラブルは起きるのです。
都会だと行政書士を始めとした法律の専門家に相談することでトラブルを
解決できますが、司法過疎地域だとそうはいきません。
専門家に相談できずに泣き寝入りするしかなかったり、
最悪の場合は実力行使に至ってしまう恐れもあります。
司法過疎地域に行政書士が進出すれば、別のトラブルを発生させることなく、
最初のトラブルを平和裏に解決することができるのです。
行政書士が司法過疎地域に進出して成功するには
いくら行政書士を始めとした士業がほとんど居ないと言っても、
司法過疎地域で開業しただけで行政書士として成功できるわけではありません。
行政書士が不足している司法過疎地域で開業して成功するにはどうすれば良いのか、
いくつかポイントを紹介しましょう。
地域に馴染む
行政書士が司法過疎地域で開業する場合に限らず、いわゆる田舎と言われる地域に
移住する場合には「地域に馴染むこと」が何よりも重要です。
地域全体で移住者を積極的に受け入れているところも多いですが、自治体のみが
積極的で地域の人は移住者が増えることを望んでいないケースがあったりします。
移住者があまり歓迎されない地域では、
移住で何よりも重要な「地域に馴染むこと」が何よりも難しいのです。
実際に移住者が地域に馴染めずに「村八分」のような扱いを受けたことが
一部のニュース番組などで話題になったこともあります。
地域にしっかりと馴染めないことには、
いくら司法過疎地域で開業しても行政書士として成功できない可能性が高いですよ。
いわゆる田舎と言われる地域には、
それぞれに独自のルールやしきたりのようなものあるケースが多いです。
開業する前に地域のルールやしきたりについて確認しておき、
開業後にはそのルールやしきたりに従って生活しなければいけません。
地域の青年団や消防団などが行う行事や会合に、
その団体に所属していなくても積極的に顔を出すようにしましょう。
人がたくさん集まるイベントに積極的に参加すれば顔と名前を覚えてもらえて、
それが結果的に地域に馴染むことに繋がるのです。
顔と名前を覚えてもらえるぐらいに馴染んだら、
無料の相談会や法律教室などを開くのも良いですね。
どんな依頼でも受ける覚悟で
司法過疎地域で行政書士として開業するなら、
「どんな依頼でも受ける」つもりにしておかないといけませんよ。
実際には行政書士ができる業務には限りがあるので、
全ての依頼を受けたくても受けられないこともあります。
行政書士にできない業務だからと言って無下に断ると、
「役に立たない」となって信用を失ってしまいます。
特に司法過疎地域はコミュニティが狭いことも多く、
1つの依頼を断ったことで地域全体の信頼を失う恐れも十分にあるのです。
行政書士にできない業務を依頼された場合には、
その業務を請け負える他の士業を紹介してあげるようにします。
できる業務は全て自分で受けて、できない業務はできる人を紹介してあげることで
「何か困ったことがあればここに相談すれば良い」と信用してくれるようになります。
司法過疎地域で開業するなら、地域の人に信用をしてもらうためにも、
「どんな依頼でも受ける覚悟」を持っておく必要があるのです。
どんな依頼でも受けるためには人脈を作っておくことが重要
どんな依頼でも断らずに受けるためには、
行政書士を始めとした士業の人脈を作っておくことが重要ですよ。
どんな依頼でも受ける覚悟があっても、
実際に全ての依頼を1人の行政書士が受けることは現実的に不可能です。
行政書士の業務だけで1万種類以上に及び、
現状で成功している行政書士でも全ての行政書士業務をこなしている人は居ません。
弁護士や司法書士など行政書士の手に負えない他の士業の独占業務に関する依頼も
入ってくる可能性が十二分にあります。
1つとして依頼を無下に断ることはできない、でも全ての依頼を1人の行政書士が
受けるのは現実的に不可能となると士業の人脈が必要となるわけです。
ただ代わりに仕事を頼める、
受けてくれる信頼関係のある人脈を築くのは決して簡単ではありません。
特に開業したての行政書士では、弁護士や司法書士どころか他の行政書士との
繋がりを作ることすらままならないほどです。
人脈は簡単に作れませんから、他の地域で開業して実績を積んでから
司法過疎地域に進出した方が成功しやすいかもしれないですね。
行政書士以外の士業資格を取得する
司法過疎地域で求められる仕事の幅を考えると、行政書士以外の士業資格を取得して
ダブルライセンス・トリプルライセンスとするのも1つの方法です。
数ある士業の中でトップに位置して扱える業務の幅が広い弁護士がベターですが、
行政書士業務の片手間に勉強して合格できるほど司法試験は簡単ではありません。
試験の難易度や業務などを勘案すると、
行政書士と司法書士のダブルライセンスが現実的なところではないでしょうか。
もちろん司法書士試験も簡単ではありませんが司法試験ほど難しくないですし、
業務的にも行政書士と司法書士は相性が結構良いです。
実際に行政書士と司法書士のダブルライセンスで働いている人も少なからず居るので、
ダブルライセンスで受けられる業務の幅を広げるのもアリですよ。
ただ行政書士として開業したて頃は、
司法書士試験の勉強が並行してできないほどにやるべきことがたくさんあります。
ダブルライセンスを目指すなら、開業前に2つの試験に合格するか、行政書士としての
仕事がある程度軌道に乗ってから司法書士試験を受けるかのどちらかです。
先に人脈のこともあるので、やはり他の地域で行政書士として開業してから司法書士の
資格を取って司法過疎地域に進出するのが現実的ですね。
行政書士は司法過疎地開業支援事業が利用できない
司法過疎地域で開業する士業を金銭的に支援する「司法過疎地開業支援事業」を
行政書士は残念ながら利用できません。
日本司法書士会連合会や日本弁護士会は司法過疎地開業支援事業を行っており、
司法書士や弁護士が司法過疎地域で開業する際には利用できます。
開業や定着に必要な資金を貸してもらえ、しかも一定期間以上司法過疎地域で
業務を行うと一部または全額返済が免除されます。
ちなみに令和元年に日司連が行った支援事業では、開業資金として最大180万円、
定着資金として最大540万円の貸し付けが受けられました。
事務所や自宅となる物件を借りるだけでもお金がかかりますし、
開業してもすぐに依頼が次から次へと入ってくるとは限りません。
開業資金や定着資金を自己資金でとなると、司法過疎地域で開業するハードルが
高くなり志があっても諦めてしまうケースが増えてしまいます。
支援事業で資金が借りられれば、志のある人が司法過疎地域で開業しやすくなります。
現状では残念ながら行政書士を対象とした司法過疎地開業支援事業は無いので、
日本行政書士会連合会でも支援事業の実施をぜひ検討してもらいたいですね。
司法過疎地域で行政書士に求められること
どんな地域で開業するにしても、
事務所周辺の状況に見合った業務を主に取り扱うことが大切です。
司法過疎地域で開業する場合も、いくら全ての依頼を請け負う覚悟であっても、
ある程度取り扱い業務を絞っておくことになります。
司法過疎地域は基本的に住んでいる人が少ないので、飲食店や風営法関連の許認可、
会社の設立や新事業立ち上げに関する業務などはほとんど需要がありません。
司法過疎地域で開業する行政書士に求められる業務にはどのようなものがあるのか、
具体的に見てみましょう。
遺言・相続分野
司法過疎地域は高齢者の多い地域でもありますから、
やはり遺言や相続に関する業務が行政書士には求められます。
遺言書の作成支援、遺産相続の取り分を決める遺産分割協議書の作成、
相続した遺産を譲渡する際の相続分譲渡証書の作成などです。
ただし遺産相続で相続人同士が揉めているのを解決するのは弁護士の業務で、
行政書士には行えないので注意が必要です。
取り分が決まっていて相続人が全員納得している場合に、
遺産分割協議書や相続分譲渡証書が作成するのが行政書士の業務となります。
一人暮らしで家族が近くに住んでいない高齢者が認知症になった場合には、
財産管理や契約締結などを本人に代わって行う成年後見人を任されることもあります。
自動車分野
司法過疎地域は電車やバスといった公共交通機関が整備されていないことが多く、
大半の住民が自動車を「足」としています。
農作業でも軽トラックなどを使いますから、
自動車の登録や車庫証明の申請なども行政書士に求められる業務です。
住民の間で自動車を譲渡する際の移転登録、
使わなくなった自動車を廃車する際の抹消登録なども行うことになりますね。
自動車を使う機会が多いと言うことは同時に交通事故も多くなります。
交通事故が発生した際の事実調査報告書の作成や自賠責保険の請求といったことも
業務として求められるケースが多くなるはずです。
土地関係
司法過疎地域には田畑や山林があり、
それらの活用や賃貸借・売買に関する業務も行政書士に依頼が入ります。
どんな土地にも登記簿の「地目」によって使い方が決められていて、
基本的に地目以外の使い方はできません。
地目以外の使い方するには転用許可申請が必要で、
例えば田畑に家を建てる場合は農地から宅地へ地目を変更しないといけません。
地目を変更する転用許可申請の書類を作成したり、
手続き自体を代行するのが行政書士の業務です。
農地を農地として売買するには市町村の機関である農業委員会の許可が必要で、
その許可申請も行政書士が代行できる業務となっています。
企業が農業に進出するのに必要な農業法人格取得の際の営農計画書の作成も
依頼される可能性がありますね。
とにかく土地関係の業務は取り扱うことになる可能性が高いですから、
転用許可申請など必要な知識はしっかりと頭に入れておきましょう。
企業の農業進出では外国人関連の業務を依頼されることも
企業が司法過疎地域で農業進出すると、
外国人関連業務の需要が増える可能性もあります。
日本は長く続く少子化で現役世代の人数が減少局面に入ってきており、
特に第一次産業である農業では働き手不足が顕著です。
働き手不足を補うために外国人労働者の受け入れを拡充する方向になっていて、
農業に進出する企業は外国人労働者を大量に雇う可能性が高いです。
日本人が日本で働くのに何の許可も要りませんが、
外国人が日本で働くには在留資格いわゆる「ビザ」が必要となります。
外国人のビザの取得や更新も行政書士の業務で、これからは司法過疎地域でも
ビザ取得業務が求められる可能性が大いにあるのです。
ただし在留資格関連の業務は通常の行政書士資格では取り扱えず、
別途「申請取次行政書士」という資格が必要です。
通称「ピンクカード」や「ホワイトカード」と言われるもので、
数時間の講習を受けて修了試験に合格すれば取得できます。
行政書士なら持っておいて損はありませんから、
司法過疎地域で開業を考えているなら取得しておくと良いですよ。
まとめ
一般的に行政書士は人数が多く、
行政書士が不足している地域は無いと思われがちです。
実際には行政書士を始めとした士業がほとんど居ない司法過疎地域があり、
そういった地域では行政書士の力が求められています。
現状では支援事業が利用できないので、
行政書士が司法過疎地域で開業するのはハードルが高いです。
いくら司法過疎地域でも単に開業しただけでは、
次から次へと仕事が入ってくるといった状況にはなりません。
しかし地域に馴染んで住民の信用を得られれば、
行政書士事務所が乱立する都市部よりもやりがいを感じられるのは間違いないです。
「困っている人の力になりたい」という志を持って行政書士を目指しているなら、
大変ですが、ぜひ司法過疎地域での開業を検討してみてください。