こんにちは、洋平です。
今回は事務所移転に伴う単位会変更について、手続き方法や費用、注意点などを
詳しく見ていきましょう。
都道府県を跨ぐ事務所移転では単位会変更が必要
東京から神奈川といったように都道府県を跨いで事務所を移転する場合には、
所属する単位会も変更しなければいけません。
行政書士を統括する組織として「日本行政書士会連合会」があり、
その下に都道府県それぞれを管轄する行政書士会いわゆる単位会があります。
47都道府県全てに単位会があり、
行政書士は事務所を構えている都道府県の単位会に所属しています。
同一都道府県内の移転であれば管轄する単位会は変わらないので、
単位会変更は必要ありません。
しかし都道府県を跨ぐ移転では、管轄する単位会が変わるため、
単位会変更が必要となるのです。
例えば東京から神奈川に事務所を移転した場合だと、
東京都行政書士会から神奈川県行政書士会に単位会変更することになります。
単位会変更は不要でも事務所移転では登録変更が必要
同一都道府県内の事務所移転では単位会変更は不要ですが、
日本行政書士会連合会に対して登録変更の手続きが必要です。
行政書士は連合会に
・氏名
・本籍地
・住所
・事務所所在地
などを登録することで行政書士としての仕事ができます。
その登録内容に変更が生じた場合には、
速やかに登録変更の手続きを行わないといけないのです。
事務所移転でなくても、自宅の引っ越しをしたり、結婚や離婚などで指名が変わったり、
本籍地を変更した場合でも登録変更が必要ですよ。
行政書士登録の際と同様に、
所属する単位会を通じて連合会に登録変更の申請を行います。
行政書士が直接連合会に登録変更の申請はできないので注意してくださいね。
単位会を変更しても元の都道府県で仕事ができる
行政書士は法律によって身分が保証されている国家資格で、
日本国内における活動範囲に制限は設けられていません。
なので単位会を変更したからと言って、以前に所属していた単位会が管轄する
都道府県で仕事ができなくなるわけではないのです。
例えば東京都行政書士会から神奈川県行政書士会に所属が変わっても、
東京で行政書士としての仕事をすることができます。
「お得意様に継続して依頼してもらってた仕事が単位会変更で受けられなくなる」と
いった心配はありませんよ。
ただ東京から神奈川のように近隣県への移転ならともかく、東京から大阪のように
遠方への移転だと実質的には元の都道府県での仕事はしにくくなります。
遠方への移転でもできなくはないのですが、
単純に移動に時間と費用がかかって効率が悪いので仕事がしにくくなるだけです。
単位会変更の手続き方法
単位会変更の手続きも、
他の登録変更と同様に都道府県の単位会を通して連合会に申請することになります。
通常は所属する単位会を通してですが、
単位会変更の場合は変更先の単位会を通して申請します。
例えば東京から神奈川に移転するのであれば、東京都行政書士会ではなく
新しい所属先の神奈川県行政書士会を通して申請するのです。
単位会変更の手続きに必要な書類は
・行政書士変更登録申請書
・戸籍抄本
・住民票抄本
・履歴書
・行政書士証票
・職印届
・顔写真
・事務所の使用権を証明する書類
・事務所の位置図
・見取り図
・事務所の外観、内装の写真
となっています。
基本的には、最初に行政書士登録した時と同じような書類が必要と考えておくと
用意しやすいですよ。
行政書士変更登録申請書
まず「行政書士変更登録申請書」ですが、
これは日本行政書士会連合会の指定用紙を使わないといけません。
連合会の公式ホームページに書式のPDFファイルがありますから、
それをダウンロードして使いましょう。
行政書士変更登録申請書を書く際に注意することは「省略をしない」ことです。
氏名は戸籍抄本に記載されている通りに書かなければならず、
簡単な漢字にしたり略字を用いたりしてはいけませんよ。
また楷書体で書くことになっており、
普段名前を書く時のように2画のところを1画で繋げて書いたりするのもダメです。
本籍地・住所・事務所の所在地は都道府県から記入し、
番地も「1番2号」を「1-2」などと省略しないようにしてください。
さらに事務所がビルに入っている場合はビルの名前と階数も記載し、
自宅や事務所がマンションの場合はマンション名と部屋番号まで書く必要があります。
それから電話番号は市外局番から記入して、押印欄には認印ではなく職印を使います。
書類に少しでも不備があると申請を受け付けてもらえないので、
申請書はしっかりとルールに則って作成しないといけませんよ。
単位会変更では事務所名に注意
単位会変更の際には「事務所名」にも注意が必要です。
行政書士法によって、同一都道府県に同じ事務所名の行政書士事務所が
2つ以上存在することは許されていません。
要するに、変更先の単位会に既に同じ名前の行政書士事務所がある場合は
単位会変更に伴って事務所名も変えないといけなくなる可能性があるのです。
そうすると表札やゴム印なども作り直さないといけなくなりますから、
事前に変更先の単位会に同一の事務所名が無いかを確認しておきましょう。
ただし行政書士法には例外規定もあり、
行政書士の名前を使った事務所名であれば同一でも構わないとされています。
例えば佐藤さんという行政書士が「佐藤行政書士事務所」という事務所名を使う場合は、
先に「佐藤行政書士事務所」があっても問題無いことになります。
なので事務所名に名前を使っているなら気にしなくても良いですが、名前以外の
事務所名の場合は単位会変更に伴って事務所名の変更も必要なることがあるのです。
戸籍抄本、住民票抄本
戸籍抄本と住民票抄本については、
申請書を提出する日から数えて3か月以内に取得したものが必要です。
戸籍抄本にも住民票抄本にも使用期限はありませんが、
あまり古いものだと内容が変わってしまっているケースが無いとは言えません。
なので戸籍抄本や住民票抄本を提出する際には、
基本的にできるだけ新しく取得したものが求められるのが一般的ですね。
また単位会によっては、住民票抄本のみで戸籍抄本は不要となるケースもあります。
住民票抄本は本籍地記載のもので、マイナンバーに関しては特に決まりはありません。
履歴書
次に履歴書ですが、
こちらも日本行政書士会連合会が指定した書式のものを使うのが基本となります。
単位会によって履歴書は1通でOKの場合もあれば2通必要な場合もあるので、
事前に確認しておきましょう。
履歴書の内容に重大な間違いがあると、最悪の場合、
行政書士登録自体が取り消しとなる恐れがあります。
特に職歴については、最終学歴から現在まで時間的な空白が生まれないように、
無職や休職の期間がある場合にはしっかりと記載しておきましょう。
行政書士証票
「行政書士証票」は、
日本行政書士会連合会の行政書士名簿に登録されていることを証明するものです。
最初に行政書士登録した際に、
連合会から交付された言わば「行政書士の免許証」のようなものですね。
行政書士証票には事務所の所在地が記載されているので、
事務所移転に伴って新しく交付してもらわないといけません。
行政書士証票の写しを提出する場合もあれば、
原本を手続きの際に提示するだけでOKの場合もあります。
単位会変更の手続きが完了して連合会から新しい証票が交付されたら、
古い証票は新たに所属する単位会を通して連合会に返還します。
また単位会によっては、変更前に所属している単位会の会員証の写しや原本の提示が
必要となるケースもありますよ。
職印届
「職印届」は、
個人で言うところの実印に当たる行政書士の職印の印影を登録するためのものです。
簡単に言うと「印鑑登録」のようなものですね。
最初の行政書士登録の際にも職印届は提出しているはずですから、
特に困ることや迷うことは無いと思います。
ただ注意すべきは、
単位会によっては職印のサイズや書体に決まりが設けられているということです。
例えば東京都行政書士会では、
サイズが一辺15~24mmの正方形で、書体は特に決まりはありません。
それが大阪府行政書士会だと、サイズは15mm角、書体は篆書体が推奨されています。
神奈川県行政書士会では、サイズ・書体ともに特に決まりはありません。
このように職印のルールは単位会によってバラバラで、
現在使っている職印が変更先の単位会では認められないことも十分に考えられます。
そうなると職印を作り直さなければならず、
単位会変更にかかる費用が嵩むことになりますね。
顔写真
「顔写真」は履歴書に貼るものを含めて、
カラー撮影した写真を大体5~6枚程度は用意しておきましょう。
縦3cm×横2.5cmの一般的な履歴書用サイズで、
申請日の3か月以内に撮影したものとなります。
帽子や色付きのメガネは着用せず、無背景、一般的には胸から上のバストアップを
撮影したものを使います。
書類に貼り付けずに提出する写真はもちろん、履歴書などに貼り付けて提出する
写真にも、裏に「県名」「氏名」「撮影日」を記入しておくと良いですよ。
事務所の使用権を証明する書類
「事務所の使用権を証明する書類」は、物件の持ち主が行政書士事務所として
使うことを認めていることを証明するものとなります。
持ち家一戸建てであれば、
自分自身の持ち家であることを証明する「登記事項証明書」を提出します。
単位会変更を申請する行政書士自身の持ち家ですから、
行政書士事務所としての使用を認める承諾書は必要ありません。
親や配偶者など親族が所有している物件の場合は、
登記事項証明書と親族が署名捺印した使用承諾書が必要です。
賃貸物件を事務所として使用する場合は、登記事項証明書に賃貸借契約書、
さらに物件の持ち主の使用承諾書の提出が求められます。
ただし賃貸借契約書に行政書士事務所として使用する旨が記載されている場合は、
仕様承諾書は不要となります。
これについても最初の行政書士登録の際に行っていることなので、
多少面倒かもしれませんが、特に困ることはないでしょう。
事務所の位置図、見取り図、写真
「事務所の位置図」は、最寄りの駅やバス停留所など目印となるものから
事務所までの道のりを示した略図となります。
「見取り図」は、事務所の区画や入口などを分かるようにしたもので、机や椅子、
パソコン、コピー機など事務機器の配置も確認できるようにしておかないといけません。
「写真」は、外観が事務所全体写真と表札を掲示している入口付近の写真となります。
内装は事務機器の配置が分かるような写真で、
見取り図の配置が正しいことを証明するものです。
内装写真については、一枚で収まりきらない場合は
角度を変えるなどして複数枚撮影してもOKです。
もちろん現地調査あり
単位会変更でも事務所として使う物件の現地調査が当然行われます。
新規登録の際とは違って、
単位会変更では行政書士としてある程度実績を積んできています。
なので事務所の現地調査に関しては、
特にダメ出しされることもなく終了する可能性が高いです。
ただ単位会によってローカルルール的なものが無いとも限らないので、
場合によっては何かしら注意や指導を受けることもあるかもしれませんね。
変更前に所属している単位会での手続き書類も必要
単位会変更は基本的に変更先の単位会で手続きを行いますが、
変更前の単位会での手続きも必要となっています。
「事務処理完了証明願」を変更前の単位会に提出して、
「事務処理完了証明」を発行してもらって変更先の単位会に提出します。
簡単に言うと、「会費未納などのトラブルを起こして単位会を変更するわけではない」
ことを前の所属単位会に証明してもらうのです。
変更前の単位会の会員証は、
単位会変更の手続きが完了したら速やかに変更前の単位会に返還しましょう。
単位会変更では再度入会金の支払いが必要
単位会変更そのものにかかる費用は、
日本行政書士会連合会の「移転登録手数料」の5,000円だけです。
これは日本行政書士会連合会に支払うものなので、
単位会によって金額が変わることなく全国共通です。
ただし、変更先の単位会に入会するための入会金と会費は別途支払う必要があります。
最初に行政書士登録する際に10~20万円程度の入会金を支払いますが、
それと同じで単位会変更の際にも入会金を払わないといけないのです。
しかも行政書士としての実績があっても関係無しで、
新規登録の場合と同じ金額を支払うことになります。
東京都行政書士会なら20万円、
神奈川県や大阪府の行政書士会だと25万円の入会金を払わないといけません。
これに会費の3か月前納分が加わり、連合会の手数料やその他諸経費を含めると
神奈川や大阪では単位会変更に30万円近くかかってしまいます。
ただでさえ事務所移転にお金がかかるのに、
単位会変更でも20~30万円ぐらいの費用がかかるのは痛いですよね。
まとめ
行政書士の単位会変更では、新規登録の際と同じような書類の提出が求められます。
なので新規登録の際に提出した書類の写しを残している場合は、
それを参考に必要書類を作成すると良いでしょう。
費用については、新規登録と同額の入会金が必要となるので、
入会金次第で30万円前後必要となることも考えられます。
必要な事務所移転に伴う単位会変更は仕方ありませんが、特に必要が無いなら
むやみに都道府県を跨ぐ事務所移転は避けた方が良いかもしれないですね。