こんにちは、洋平です。
今回は、行政書士試験に受かったのに行政書士として登録しないとどうなるか
についてお話ししましょう。
行政書士登録をしないと行政書士の仕事ができない
行政書士試験に合格したにも関わらず、
行政書士登録をしないとどうなるのでしょうか?
結論から言うと、「行政書士の仕事ができない」ことになります。
行政書士は国家資格で、その身分は「行政書士法」という法律によって
保証されていると同時に縛られてもいます。
行政書士試験に合格して行政書士として仕事をするには、
各都道府県の行政書士会を通して日本行政書士会連合会に登録する必要があります。
これは先の行政書士法によって定められていることなんです。
独立開業して事務所を開く場合はもちろん、
行政書士事務所に就職して行政書士として働く場合でも登録しないといけません。
一般企業に就職して、
本来は行政書士に依頼しないといけない案件を代行するのもダメです。
要するに、行政書士の資格を取っただけでは仕事はできず、
行政書士登録をすることで初めて行政書士の仕事ができるようになるというわけです。
登録せずに行政書士の仕事をするのは法律違反ですから、
行政書士の仕事をするなら必ず行政書士登録をしておきましょう。
登録しないと行政書士と名乗ってはダメ
行政書士登録していないと、行政書士としての仕事ができないだけでなく、
「行政書士」と名乗ることもできないんです。
これも行政書士法で定められていることで、
登録せずに行政書士を名乗るのは法律違反となります。
例えば、登録していないのに名刺や履歴書に「行政書士」と記載するのはNG。
ハッキリと「行政書士」と言い切らず、
「行政書士有資格者」と少しぼやかした言い方もダメです。
どうしても「行政書士になれる資格を持っていること」をアピールしたいなら、
「行政書士試験合格者」ぐらいの表現に留めておきましょう。
行政書士試験合格は生涯有効
国家資格の中には、
有効期限が設けられていて定期的に更新しないといけないものもあります。
しかし行政書士の資格には有効期限や更新は無く、生涯有効となっています。
ですから一度行政書士登録をしてしまえば、大きな問題を起こさない限りは、
一生行政書士として仕事ができるというわけです。
また「行政書士試験に合格したらいつまでに登録しないといけない」といった決まりも
ありません。
なので行政書士試験に合格してもすぐに登録せず、
数年後に登録して開業するといったことも可能なんです。
とりあえず行政書士試験に合格したけど、まだ行政書士として仕事をする気が無いなら、
行政書士登録しないという選択もアリです。
行政書士登録しない場合の意外なデメリット
行政書士登録しない場合の一番大きなデメリットは、
もちろん「行政書士の仕事ができないこと」です。
それからもう1つ、地味だけど意外と大きなデメリットとして「行政書士会から情報が
入らないこと」があります。
「行政書士の仕事をしないなら、行政書士会から情報が入らなくても問題無い」と
思うかもしれません。
しかし行政書士の主な仕事は「法律に則った行政関係の書類作成」です。
そのため行政書士の仕事には多くの法律が関わっていて、
それらの法律は頻繁に改正が行われています。
新聞などで報道されるのは、国の根幹に関わる重要な法律や国民生活に
深く関わっている法律が改正される時だけです。
ですから「法律は何年もずっと同じ」と思われがちですが、
実際に年間100~200件の法律改正が行われています。
行政書士の仕事に関わる法律もたくさん改正されており、
行政書士は改正内容をしっかりと把握しておかないといけません。
行政書士登録をして行政書士会に所属していると、
行政書士会から法律改正に関する情報が随時入ってきます。
さらには、法律改正の内容を詳しく教えてくれる研修会や勉強会にも、
行政書士会に所属していると参加できるんです。
しかし行政書士登録していないと、
こうした行政書士業務に関わる法律改正の情報が入ってこなくなります。
試験に合格してから数年後に行政書士登録して仕事を始めようとすると、
法律が大幅に変わっているといったこともありえることです。
そうすると、試験の時に勉強したことが役に立たず、
また一から勉強し直さないといけないことになるかもしれません。
実は「行政書士会から情報が入らないこと」が、
行政書士登録しない場合には意外と大きなデメリットとなります。
横の繋がりができない
行政書士登録しないと、
行政書士同士や他の士業との「横の繋がりが作れない」というデメリットも発生します。
人付き合いが苦手な人にとっては、
別に大きな問題じゃないように思えるかもしれません。
でも「行政書士に仕事を依頼する側」になって考えてみてください。
これまでに「個人的に行政書士に何か仕事を直接お願いしたことがある」という人は
少ないんじゃないでしょうか?
かく言う私も、業務として行政書士の方に仕事をお願いしたり、
一緒に仕事させていただいたことはあります。
しかし仕事以外で個人的に行政書士に直接何か仕事をお願いしたことはありません。
だからと言って、
個人的に行政書士と関わらずに生活できるかと言うとそうでもないんです。
例えば、
自動車を購入する場合の名義変更や車庫証明書の作成などは行政書士の仕事です。
でも自動車購入に必要な書類作成はディーラーなど販売業者を通じて行うので、
直接行政書士にお願いすることは少ないです。
要するに「行政書士は他の業種と連携して仕事を行うことが多い」ということです。
ですから横の繋がりが作れないと、
行政書士としての仕事が安定して入ってこないことになります。
行政書士登録して、
行政書士会が行う研修会や勉強会に参加することで横の繋がりができます。
横の繋がりができることで仕事の幅が広がり、
行政書士としての仕事が安定するというわけです。
行政書士登録だけしておくこともできるが・・・
「副業として行政書士業務をするのに、登録だけでもしておくか」と
考える人も居るかもしれません。
行政書士として仕事をしなくても、
行政書士登録だけしておくということはもちろんできます。
できるんですが、正直なところ、あまりおすすめできる方法じゃありません。
行政書士登録だけしておくには、2つの大きなハードルがあります。
1つは「行政書士登録には時間と手間がかかること」、
もう1つは「行政書士登録とその維持にお金がかかること」です。
都道府県の行政書士会を通して日本行政書士会連合会に登録するのって、
実はかなり面倒なんです。
必要な準備もありますから、
「とりあえず登録だけでもしておくか」といった軽い気持ちでは登録が認められません。
それから行政書士登録には数十万円単位のお金がかかり、
その登録を維持するのにも年間数万円の費用が発生します。
行政書士として仕事をするなら、
登録や維持にかかるお金以上に稼げれば問題ありません。
しかし「とりあえず登録だけ」では、
登録や維持でお金が出ていく一方で取り返すことができないんです。
行政書士登録するには
行政書士として登録するには、
まず各都道府県の行政書士会に必要な書類を提出します。
そして都道府県の行政書士会による調査・審査、
さらに日本行政書士会連合会の審査を経て、晴れて行政書士として登録されます。
こうした場合の調査や審査は「形だけ」という場合も多いですが、
行政書士の場合はそうはいかないんです。
万が一にも、
問題のある人を行政書士として登録してしまうといったことがあってはいけません。
そのため各都道府県の行政書士会による調査・審査はしっかりと行われ、
結果が出るまでに少なくとも1か月以上はかかります。
行政書士登録に必要な書類
行政書士登録に必要な書類は
・行政書士登録申請書
・履歴書
・誓約書
・住民票(本籍地記載)
・身分証明書
・顔写真(無帽、正面、上三分身、無背景、3cm×2.5cm)
などとなっています。
「住民票」「身分証明書」「顔写真」の3点は、
申請日の前3か月以内に取得・撮影したものが必要です。
また、場合によっては「戸籍抄本」の提出を求められることもあります。
さらに、公務員としての勤務経験がある場合は「公務員職歴証明書」、
行政書士として就職する場合は「雇用契約書」も必要となります。
ちなみに「行政書士登録申請書」は、日本行政書士会連合会の公式サイトで
ダウンロードできますし、行政書士会の支部でも手に入れられます。
提出する書類に少しでも不備があれば、
調査・審査にかかる時間が長くなってしまいます。
不備の度合いによっては、
「不適格」となって行政書士登録を認められないことも十分に考えられるんです。
ですから行政書士登録の際には、
事前に各都道府県の行政書士会などで必要書類について確認しておきましょう。
開業する場合は事務所の調査も行われる
行政書士として就職するのではなく、
独立開業する場合には行政書士登録の際に「事務所の調査」も行われます。
自宅を事務所として使うことができますし、
実際に自宅を事務所として使っている行政書士さんもたくさんいらっしゃいます。
ただ行政書士は、
遺言書や遺産分割協議書など高度な個人情報を取り扱う仕事をすることもあります。
そのため行政書士の事務所には、
「個人情報が厳重に保管できる環境」が求められるんです。
さらに情報管理にプラスして「プライバシー保護」の意味で、
事務スペースと応接スペースを分ける必要があります。
事務員が作業している横で、プライバシーに関わるような相談なんてできないですよね。
ですから、独立した応接スペースが確保されていて、応接スペースで話していることが
外に聞こえないように配慮しないといけないわけです。
自宅以外に事務所を構えるとなると、
必然的に2部屋以上ある物件を借りることになります。
そうすると家賃もそれなりの金額となりますから、
「登録だけでもしておく」ことは難しいんじゃないでしょうか。
行政書士登録にかかるお金
行政書士登録する際には、
必要書類の提出と同時に登録に必要な費用も支払わないといけません。
行政書士登録には
・入会金
・登録手数料
・会費(登録時は3か月分一括払い)
・収入印紙代
・政治連盟会費
といった費用を払うことになります。
都道府県によって違いはありますが、
「入会金」だけで大体10~25万円ぐらいかかります。
その他の費用を含めると、
行政書士登録の際には大体30万円前後の費用が必要なんです。
さらに、「会費」には都道府県の行政書士会に払う分と支部に払う支部会費の
2種類があります。
都道府県の行政書士会の会費は月6,000円前後で年間7万円程度、
支部会費の方は年間で1万円程度といったところです。
これは行政書士会に所属している間はずっと払わないといけません。
なので、事務所の家賃と会費を合わせると「登録しているだけ」でも
年間でかなりの金額を支払うことになってしまいます。
行政書士会の会費を払わないと廃業に追い込まれることも
「登録するだけで、行政書士の仕事はしないから会費は払わなくても良いんじゃない?」
と思うこともあるかもしれません。
支部会費の方については、もちろん払わないといけませんが、
払わなくても行政書士の仕事に大きな影響はありません。
研修会や勉強会に参加できなくなったり、
支部からの仕事依頼が回ってこないといったペナルティを受けるだけです。
(これはこれで痛い・・・)
ただ行政書士会の会費については、
払わないと最悪の場合「廃業」に追い込まれる恐れがあります。
会費の支払いが滞ると、所属している行政書士会から督促が来ます。
督促を受けて支払えば問題ありませんが、
督促を無視し続けると「会員資格停止」の処分が下されます。
「会員資格停止」になると、
行政書士としての仕事はできるものの研修会や勉強会に参加できなくなります。
それでも会費を払わないと、
期限付きの「会員権停止」になるとともに「廃業勧告」が行われます。
「会員権停止」になると、「行政書士会の会員として活動できない=行政書士としての
仕事ができない」ことになります。
「会員権停止」や「廃業勧告」といった処分を受けると、
都道府県の行政書士会の公式サイトに名前が掲載されてしまいます。
そうなると滞納分を清算しても、行政書士として仕事を続けることが難しくなります。
年間6~7万円程度の会費支払いが「キツい」と感じるなら、
「登録するだけ」は止めた方が良いですね。
開業資金が無いなら融資を利用する
行政書士として開業したいけど、登録に必要な30万円ほどの資金が用意できない
といったこともあるかもしれません。
そういった場合は、日本政策金融公庫の「創業融資」を利用するのはどうでしょうか?
日本政策金融公庫には新規開業を支援するための融資制度があります。
しかも「政府系金融機関」ですから、一般の金融機関に比べると金利が低く、
返済期間も長く設定することができるんです。
創業融資の場合は、金利が2%台で、返済期間は最大で5年間となっています。
また、創業融資を利用することは行政書士としての「実績作り」にも繋がります。
日本政策金融公庫に限らず、
金融機関で事業融資を受ける場合には「事業計画書」の作成が必要となります。
実はこの「事業計画書の作成」が「行政書士の仕事」なんです。
自分が融資を受けるための事業計画書作成では、
もちろん行政書士としての正式な実績にはなりません。
しかしこれから行政書士として仕事を開始すると、
必ずと言って良いほど事業計画書を作成する時が来ます。
いずれ仕事として事業計画書を作る際に役立ちますから、
必要無くても創業融資を受けておくのも良いかもしれません。
まとめ
「行政書士登録しないとどうなる?」と聞かれたら、
「行政書士として仕事ができない」と答えます。
行政書士として仕事するには行政書士登録が必要である、
と法律によって定められています。
ですから、就職するにしても開業するにしても、
行政書士として仕事をするなら日本行政書士会連合会に登録しておきましょう。
ただ「行政書士試験の合格」は生涯有効なので、
「すぐには行政書士の仕事をしない」という場合は登録する必要はありません。
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