こんにちは、洋平です。
運送業開業に必要な「運送業許可」の申請は各種申請・届出の中でもかなり難易度が
高く、書類作成や申請手続きは行政書士に依頼するのが一般的です。
運送業許可申請を行政書士に依頼した場合の報酬相場はいくらぐらいなのかなど、
運送業許可申請について詳しく見ていきましょう。
運送業許可申請を行政書士に依頼した時の報酬相場
運送業許可は「一般貨物自動車運送事業経営許可」が正式名称で、
その申請を行政書士に依頼した場合の報酬相場は40~45万円です。
行政書士の報酬には基準のようなものは無く、個々の行政書士が自由に報酬額を
決められるので報酬相場といったものは基本的にはありません。
ただ日本行政書士会連合会が5年ごとに報酬額の統計調査を行っており、
はその調査結果を報酬相場と見なします。
直近2020年の調査結果では一般貨物自動車運送事業経営許可申請の報酬額は
平均値が449,516円、最頻値が400,000円となっています。
全国に個人・法人合わせて5万人以上行政書士が居ますが、2020年の調査で
一般貨物自動車運送事業許可申請の報酬額を回答しているのは100人ほどです。
統計としてどこまで正しいか判断が難しいものの、一般貨物自動車運送事業許可申請
には40~45万円はかかると思っておくと良いのではないでしょうか。
譲受や相続の際の報酬相場
一般貨物自動車運送事業許可は会社と人がセットで受けるもので、
会社を譲渡されたりや相続した場合には改めて申請をしなければいけません。
新規申請とは別の手続きになるので、
行政書士に依頼した場合の報酬相場も新規申請の際とは少し変わります。
譲受や相続、合併などで改めて一般貨物自動車運送事業許可を申請する際の
行政書士の報酬相場は平均値で411,148円、最頻値が440,000円です。
譲受や相続での申請で行政書士に支払う報酬は新規申請とほとんど同じか
少し安いといったところでしょうか。
ただこちらも日本行政書士会連合会の調査結果なのですが、回答しているのが
30人ほどなので統計としては先の新規申請よりも正確性には欠けそうです。
運送事業に関わるその他の申請・届出の報酬相場
運送業は開業の際の許可申請だけでなく、
開業後にも様々な申請や届出を提出することになります。
例えば年に1度
・事業報告書(営業報告書)
・事業実績報告書
という2種類の報告書を運輸支局に提出しなければいけません。
事業報告書は事業年度終了から100日以内、事業実績報告書は毎年7月10日まで
の提出が必要で、提出しないと営業停止の処分を受けることもあります。
営業所を移転したり新しく追加したり、
約款を変更したりといった大きな変更には事前の事業計画変更認可申請が必要です。
トラックの増減、運賃の変更などの軽微な変更では事前の事業計画変更届の提出が
求められます。
事業報告書の作成を行政書士に依頼した場合の報酬相場は平均が30,517円、
最頻値が30,000円となっています。
事業実績報告書の作成の報酬相場は平均で25,496円、
最頻値で11,000~33,000円です。
事業計画変更認可申請を行政書士に依頼した場合の報酬相場は平均で129,638円、
最頻値で55,000~200,000円となります。
事業計画変更届出のトラック増減では平均で20,999円最頻値で22,000円、
その他軽微な変更での届出では平均で17,578円最頻値で20,000円です。
運送業許可を申請するための要件
運送業を起業したいからと言っても誰でもすぐに許可申請ができるわけではなく、
いくつかの要件を満たしておく必要があります。
運送業許可を申請するために満たしておくべき要件は大きく「人」「物」「金」の3つに
分けられます。
まず「人」の要件ですが、運送業許可の申請者は「一般貨物自動車運送事業の
許可等の申請に係る法令試験」に合格しなければいけません。
一般的な申請のように試験に合格してから申請ではなく、
申請してから受験して合格する必要があるのです。
(申請後でないと受験できず、複数人でも受験も不可)
法令試験に2回不合格になると申請は取り下げとなり、
改めて最初から申請し直すことになります。
2つ目は申請者が欠格事由に該当していないかどうかで、
該当していると申請が却下されてしまいます。
運送業許可申請の欠格事由は以下の通りです。
・5年以内に1年以上の懲役または禁固の刑罰を受けている
・5年以内に一般貨物、特定貨物の運送事業許可が取り消された
・密接関係者が5年以内に一般貨物、特定貨物の運送事業許可が取り消された
・5年以内に許可取消処分を逃れるために自主廃業した
・申請者の法定代理人が欠格事由に該当している
個人事業主が申請する場合は個人事業主自身、法人が申請する場合は
取締役や監査役など役員が欠格事由に該当しているとアウトです。
3つ目は5人以上の運転手の確保で、運送業で使用する事業用自動車を運転できる
免許を持った従業員が5人以上居ないといけません。
申請時点で従業員として5人以上の運転手を雇っていなくても、
事業開始時点までに5人以上が確保できる見込みであればOKです。
4つ目は運行管理者の確保で、車両29台までは1人で良いですが
30台以上は車両30台ごとに1人の運行管理者が必要となります。
運行管理者には誰でもなれるわけではなく
・5年以上実務経験と5回以上の講習受講
・運行管理者試験合格
のいずれかの条件を満たしていないと運行管理者として選任できません。
ちなみに運行管理者試験を受験するのにも
・1年以上の実務経験
・運行管理者基礎講習修了
のいずれかの要件を満たしておく必要があります。
5つ目は常勤の整備管理者の確保で、
営業所ごとに1名の車両の整備管理者を置くことになります。
整備管理者は
・自動車整備士資格(一~三級のどれでもOK)
・点検、整備、整備管理の実務経験2年以上+整備管理者選任前研修修了
のいずれかの要件を満たしていることが必要です。
運送業許可を申請するための「物」の要件
運送業許可を申請するのに満たしておくべき「物」の要件1つ目は「営業所」です。
運送業を経営するには当然営業所が必要ですが、運送業の営業所にも
・農地法、都市計画法、建築基準法への適合
・使用権原
・敷地面積
・車庫との距離
といった要件が設けられています。
まず農地法では農地にある建物を営業所としては使えないことになっているので、
農地転用をしなければいけません。
地域によっては農地に家を建てることは可能ですから、
個人事業主で自宅を営業所にする場合は土地の地目に注意が必要です。
次に使用権原ですが、これは簡単に言うと「建物の所有者が運送業の営業所として
使用することを認めているかどうか」です。
申請者が自己所有している建物なら使用権原はOK、
賃貸物件でも営業所として借りているなら使用権原に問題はありません。
敷地面積については「何㎡以上」といった明確な基準はなく、
運送業を営むのに必要な備品を備えた上で業務が行える現実的な広さとなります。
必要以上に小さい・狭い建物でない限りは大丈夫だと思います。
車庫との距離は各地域の運輸局が定める直線距離内に営業所と車庫があれば
OKです。
例えば関東運輸局の場合は
・東京23区内、神奈川(川崎、横浜) 20km以内
・千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨と上記以外の東京、神奈川 10km以内
となっています。
3つ目は休憩施設で、運転手が休憩・睡眠を取るための施設を営業所もしくは
車庫に併設しなければいけません。
運転手が終業後に帰宅して8時間以上の休息が取れる業務のみであれば
休憩施設のみでOKです。
運転手が帰宅して8時間以上の休息が取れない業務がある場合は
睡眠施設も作る必要があります。
休憩施設は椅子やテーブルが設置された簡易なもので良いですが、
睡眠施設は1人当たり2.5㎡のスペースの確保が求められます。
4つ目は車庫で、所有する全ての事業車両が駐車できてなおかつ
車両同士や車両と車庫の壁の隙間が50cm以上空いていなければいけません。
また車庫前の道路は6.5m以上の幅員が必要で、
6.5m未満の場合は個別に調査を受けることになります。
5つ目は車両で、車検証の用途が貨物の事業車両が5台以上必要です。
用途が貨物であれば積載量が何tでも排気量が何ccでも良いのですが、
軽自動車は運送業の事業車両に含められません。
またトレーラーを事業車両として使用する場合は、けん引する側の
トラクタ(トレーラーヘッド)とけん引される側のトレーラーのセットで1台と見なします。
運送業の事業車両は所有者または使用者が運送業許可の申請者になっている必要が
あります。
自己所有の車両なら全く問題ありませんし、
使用者が申請者になっていればリース車両でもOKです。
運送業許可を申請するための「金」の要件
運送業許可を申請するのに必要な「金」の要件としては
・自己資金
・賠償責任能力
が挙げられます。
まず自己資金ですが、運送業許可の申請では
・車両代
・建物代
・土地代
・車両の保険料
・各種税金(公租公課)
・運転資金
・登録免許税
を全て足したものが必要な自己資金と見なされます。
車両代は車両調達にかかる費用で、購入する場合は一括購入なら購入費全額、
割賦購入なら頭金+1年分の割賦金、リースなら1年分のリース料です。
建物代は建物、土地代は土地の取得にかかる費用で、一括購入なら全額、
分割払いなら頭金+1年分の割賦金、賃貸なら敷金など初期費用+1年分の賃料です。
車両の保険料は全車両1年分の自賠責保険料+任意保険料で、
危険物を運ぶ場合は危険物の賠償保険料1年分も含まれます。
各種税金は1年分の法人税や住民税、事業税、延滞税などの罰金、交通反則金、
行政サービスの手数料、商工会や同業者組合の会費・賦課金などです。
運転資金は従業員の人件費、車両の燃料代・修理費などの6か月分となっています。
登録免許税は運送業許可取得そのものに発生する税金で、
運送業許可の場合は12万円です。
車両代・建物代・土地代は既に所有しているのであれば現物でOKですが、
運転資金は現金なので運転資金だけでも少なくとも2000万円ぐらいは必要となります。
2つ目の「賠償責任能力」ですが、これは賠償額が対人無制限・対物200万円以上の
車両の任意保険に加入しているかどうかです。
運送業務として危険物輸送を行う場合には、
別途危険物輸送に対応した任意保険への加入も必要です。
運送業許可取得までにかかる期間
運送業許可の申請をしてから実際に許可が下りるまでにかかる期間は最低5カ月、
準備期間を含めると1年以上かかることもあります。
まず運送業許可の申請をするためには、
先に書いた要件を満たしておかないといけません。
特に営業所や車庫、従業員、車両の確保は簡単にできないことも多いので、
運送業許可申請をするなら早めに準備することが求められます。
運送業許可の申請を行うと管轄の運輸支局で審査されるのですが、
その審査に3~5か月かかります。
3~5か月というのは標準処理期間と言われるもので、
運送業許可以外の申請でも処理するのにこのぐらいの期間がかかるという基準です。
運輸支局の業務状況によって処理期間は変わるものの、
遅くなることはあっても早くなることはなくきっちり5か月かかると思っておきましょう。
また許可が下りてもすぐに運送業が始められるわけではなく、
・登録免許税の納付
・運行管理者、整備管理者の選任届提出
・運輸開始前の確認報告
・事業用ナンバー(緑ナンバー)の取得
・運輸開始届出書、運賃料金設定届出書の提出
といったことを許可が下りてから1年以内に行わないといけません。
事前にしっかりと準備していても2週間程度はかかりますし、
準備していないと数か月かかってしまうこともあります。
運送業許可を申請してから実際に業務が行えるようになるまで早くても半年、
準備期間を含めると1年ぐらいは見ておいた方が良いかもしれないですね。
運送業許可が不要なケース
荷物を運ぶからと言って必ず運送業許可申請をしなければいけないわけではなく、
運送業許可申請が不要なケースもあります。
荷物の運送に運賃が発生しない場合は、
業務として運送を行っているわけではないので運送業許可は不要です。
例えば大型トラックでないと運べない資材を購入した時に、
自社のトラックで取りに行って運ぶと運賃は発生しませんよね。
また建設業者が建築資材を運ぶのに運賃を取っていない場合も
建設業者は運送業許可を取る必要がありません。
ただし運賃を建設費に上乗せして請求すると「実質的に運賃が発生している」と
見なされて運送業許可取得が必要となります。
運賃が発生しない場合は運送業許可を取らなくて良いのは当然なので分かりやすい
ですが、運賃が発生する場合でも運送業許可が不要なケースもあるのです。
運賃を貰って荷物を運ぶのに運送業許可が不要なのは、
事業車両として軽自動車やバイクを使う場合です。
運送業許可は普通自動車や大型自動車を使って荷物を運ぶ業務を行うのに
必要な許可で、軽自動車やバイクは運送業許可の対象外となっています。
ただし何の許可や届出も無しに運送業が始められるわけではなく、
軽自動車やバイクを使って運送業を行うには「軽貨物運送事業の届出」が必要です。
運送業許可と同様に届出をするのに必要な要件が設けられていますが、
運送業許可に比べると必要な要件が少なくクリアしやすいです。
またバイクは排気量126cc以上が軽貨物運送事業の届出の対象で、
125cc以下は届出をしなくても運送事業を行えます。
運送業許可に比べると軽貨物運送事業の届出は申請が通りやすいですから、
個人で運送事業を始めるなら軽貨物運送事業から取り掛かるのも良いですよ。
まとめ
運送業許可申請を行政書士に依頼した場合は大体40~45万円ぐらいの報酬が
必要と考えておきましょう。
結構高額ではありますが、
それだけ運送業許可申請には手間も時間もかかるということです。
自分で申請することも可能ではあるものの、運送業を始めるための準備と並行して
申請に必要な書類を集めたり作ったりするのは簡単ではありません。
少しの不備でも申請は受理されませんから、
運送業許可申請を行うのであれば行政書士に依頼するのがおすすめですよ。