不動会社を営むのに必要な宅地建物取引業許可いわゆる宅建業許可の取得手続きを
行政書士に依頼するケースが多くなっています。
今回は行政書士に宅建業許可申請を依頼した場合の報酬相場など
宅建業許可申請について詳しく見ていましょう。
宅建業許可を取得するのに役立つ情報を紹介しますから、
ぜひ最後まで読んで参考にしてくださいね。
宅建業許可申請を行政書士に依頼した場合の報酬相場
最初に宅建業許可申請を行政書士に依頼した場合の報酬相場を紹介します。
ただ行政書士の報酬に決まった基準は無く、
それぞれが自由に報酬を決められるので何をもって相場とするのかが難しいです。
今回は日本行政書士会連合会が5年に1度取っている行政書士の報酬に関する
統計を元に宅建業許可申請の報酬相場を見ていきます。
最新の2020年度統計では宅建業許可申請の報酬相場は以下の通りとなっています。
・知事許可 平均値112,535円 最頻値100,000円
・大臣許可 平均値174,543円 最頻値150,000円
申請先が都道府県知事か国交大臣かで報酬額が違っていますが、
宅建業許可申請を行政書士に依頼すると大体10~15万円ぐらいが必要ということです。
10~15万円が相場ですが、当然行政書士によっては相場よりも
高く設定していることもあれば安く設定していることもあります。
必ず10~15万円に収まるわけではないので、
行政書士に依頼する場合は事前に報酬について確認しておきましょう。
宅建業許可は取得したら終わりではない
宅建業許可は一度取得したら永久に有効というわけではなく、
5年に1度許可の更新を行わないといけません。
新規取得ほど手続きは面倒でないものの簡単でもありませんから、
宅建業許可更新も行政書士に依頼するケースが多くなっています。
宅建業許可更新を行政書士に依頼した場合の報酬相場は以下の通りです。
・知事許可 平均値78,679円 最頻値50,000円
・大臣許可 平均値103,868円 最頻値100,000円
新規取得と同様に知事許可と大臣許可で報酬額が変わりますが、
大体5~10万円程度かかると思っておくと良いでしょう。
宅建業許可の申請・更新には法定費用がかかる
宅建業許の申請・更新には法定費用がかかり、
行政書士に依頼する場合は行政書士の報酬プラス法定費用を払うことになります。
市役所で住民票や戸籍謄本などを発行してもらうのに数百円の手数料を払いますが、
宅建業許可などの申請にも手数料が発生するのです。
数百円程度の手数料なら現金で払えるものの、数千円・数万円単位の手数料となると
収入証紙や収入印紙を購入して手数料の支払いに代えます。
宅建業許可申請・更新にかかる法定費用は以下の通りとなっています。
・知事許可申請 33,000円
・大臣許可申請 90,000円
・更新(共通) 33,000円
知事許可の33,000円に対して大臣許可は90,000円とかなり高額ですが、
これは申請手数料に登録免許税が含まれるからです。
登録免許税は宅建業許可申請など国から許可を受けることそのものに対して
発生する税金です。
ちなみに行政書士や宅建士などの士業として登録する際にも税額は違いますが
登録免許税が発生します。
行政書士の報酬に法定費用をプラスすると、宅建業許可申請では知事許可で
15~20万円、大臣許可だと20~25万円、更新は10~15万円かかることになります。
実際に不動産業を営むにはさらに100万円以上かかる!?
20万円前後の費用をかけて宅建業許可を取得しても、
それだけではまだ不動産業を営むことはできません。
実際に不動産業を営むためには、
宅建業許可申請にかかる費用以外に100万円以上の費用が必要なのです。
土地建物の売買では取引金額が大きくなるため、万が一取引で事故が発生した
場合には業者・顧客ともに大きな債務・損害を被ることになります。
取引事故によって発生した債務・損害を一定程度補填するために国の機関である
供託所に一定金額を預けておくわけです。
供託所に預ける金額は本店が1000万円、
支店が1店舗につき500万円となっています。
利益活動を始める前に1000万円用意しろと言われても用意できませんから、
不動産業者の多くは
・宅建業協会
・不動産業協会
といった業界団体に入会します。
こうした業界団体に入会すると供託金が本店60万円、支店30万円と
大幅に減額されるのです。
万が一不動産取引で事故が発生しても業界団体が保証してくれるので、
通常よりも供託金が大幅に少なくても構わないわけです。
ただ業界団体に入会するには入会金や会費などが必要となっており、
それに総額で100万円以上かかります。
例えば東京都宅地建物取引業協会に入会する場合は、
・東京都宅地建物取引業協会
・全国宅地建物取引業保証協会
・東京都宅建協同組合
の3つの団体にまとめて入会することになります。
それぞれ入会にかかる費用は
・東京都宅地建物取引業協会 入会金500,000円(支店は400,000円)
年会費48,000円
・全国宅地建物取引業保証協会 入会金200,000円(支店は100,000円)
弁済業務保証金分担金600,000円
(支店は300,000円)
年会費6,000円
・東京都宅建協同組合 入会金50,000円
出資金30,000円
賦課金(年額)18,000円
で合計1,425,000円です。
供託金1000万円に比べるとはるかに安い金額ですが、それでも宅建業許可申請と
合わせると200万円近い資金を事前に準備しておく必要があります。
業界団体への加入申請も行政書士にサポートしてもらえる
宅建業許可申請だけでなく、実際に不動産業を営むのに必要な業界団体への
加入申請も行政書士にサポートしてもらえます。
宅建業許可申請ほど面倒ではないものの手間がかかりますから、宅建業許可申請と
一緒に業界団体への加入申請も行政書士に依頼するケースは結構あるのです。
当然業界団体の入会金などとは別に行政書士への報酬は発生します。
業界団体への加入申請を行政書士に依頼した場合の報酬相場は平均値が37,475円、
最頻値は55,000円です。
宅建業許可の内容に変更が生じたら変更届出が必要
宅建業許可を受けたら更新までの5年間は特に申請や届出は不要ですが、
許可の内容に変更が生じた場合はその都度変更届出が必要です。
具体的には
・会社名(商号、名称)
・代表取締役など役員
・役員の氏名(結婚などに伴う改姓や改名)
・専任宅建士
・専任宅建士の氏名
・事務所の所在地(同一都道府県内での移転)
などに変更があった場合は30日以内に変更届出を提出しなければいけません。
会社名や役員、所在地が変わった場合は変更登記が必要ですが、専任宅建士の
変更では変更登記は不要なので変更届出も忘れてしまいがちなので注意してください。
変更届出が必要な変更があったにも関わらず変更届出を提出していないと、
宅建業許可の更新を受け付けてもらえなくなる恐れがあります。
宅建業許可が更新できないと当然廃業せざるをえないので、どんな細かいことでも
変更があった場合には届出が必要か管轄の行政庁や行政書士に確認しましょう。
変更届出を行政書士に依頼した場合の報酬相場
変更届出に必要な書類の作成や提出も行政書士に依頼できます。
変更届出を行政書士に依頼した場合の報酬相場は平均値が29,313円、
最頻値が33,000円となっています。
都道府県を跨いだ営業所の移転以外では変更届出に法定費用は発生せず、
行政書士の報酬だけでOKです。
ただし行政書士の報酬は変更項目1つ当たりの金額で、
同時に2つ以上の変更がある場合は報酬金額が高くなります。
都道府県を跨いだ営業所移転による変更届出では、
新規申請の場合と同様に33,000円の法定費用が別途必要です。
また営業所移転では法務局での変更登記が必要となり、
都道府県を跨がない場合でも変更登記の方で法定費用が発生します。
宅建業許可の知事許可と大臣許可の違いは?
宅建業許可には都道府県知事から受けるものと国交大臣から受けるものの
2種類があり、それぞれ申請にかかる費用が違います。
「複数の都道府県に営業所を構えているかどうか」で知事許可を受けるのか
大臣許可が必要なのが変わってきます。
営業所は本店のみの場合は当然1つの都道府県にしか営業所がありませんから、
営業所のある都道府県の知事から宅建業許可を受ければOKです。
本店以外に支店があってその支店が本店とは別の都道府県にある場合は
国交大臣から宅建業許可を受ける必要があります。
例えば東京都に本店があって支店が神奈川県にあるとすると、
複数の都道府県に営業所のあるので大臣許可でないといけないわけです。
また現状では本店のみでも新たに別の都道府県に支店を出す場合には
「免許換え」の手続きをしなければいけません。
現状本店のみと言うことは知事許可を営業を行っており、
そのままで別の都道府県に支店を出して営業を行うことはできません。
複数の都道府県に営業所を構えるには大臣許可が必要で、
現在受けている知事許可を大臣許可に換えてもらう必要があるのです。
免許換えと言っても実質的には大臣許可を新規申請するのとほぼ同じで、
手続き内容も費用も新規申請時とほとんど同じとなります。
宅建業許可申請と宅建士資格登録申請
宅建業許可申請は不動産業を営む会社として申請するもので、
宅建士資格登録申請は不動産会社で宅建士として働く個人が申請するものです。
宅建業許可を受けないことには宅地や建物を取引する不動産会社を開業することが
できません。
ただ宅建業許可を受けるには専任宅建士が必要で、
宅建業許可の前に宅建士資格登録申請を行っておかないといけないのです。
宅地や建物を取引する際の重要事項の説明と不動産契約書への押印は
宅建士でないとできない決まりとなっています。
そもそも宅建業許可申請の書類には専任宅建士の名前を記載しなければ
なりませんから、宅建業許可申請の前に宅建士の確保が必要です。
一般的に宅建士試験に合格すれば宅建士なれると思われがちですが、
宅建士試験に合格しただけでは宅建士としての仕事はできません。
仕事ができないだけでなく宅建士と名乗ることもできないので注意しましょう。
宅建士試験に合格したら所在地の都道府県に宅建士資格登録申請を行い
都道府県知事に「宅建士証」を発行してもらうことで宅建士として仕事ができます。
宅建士資格登録申請には不動産業の実務経験か講習の受講が必要ですから、
不動産業未経験の場合は事前に講習を受講しておきましょう。
ちなみに宅建士だけでなく弁護士や行政書士などいわゆる士業と言われる職業は
いずれも試験合格後に資格登録申請の必要があります。
宅建士試験合格の効力に期限はありませんが、合格から1年以上経過して
資格登録申請を行う場合は法定講習を受けなければいけません。
宅建士資格登録申請にかかる費用
宅建士資格登録申請に必要な書類の作成や手続きの代行も
行政書士に依頼することができます。
宅建士資格登録申請を行政書士に依頼した場合の報酬相場は平均値が25,452円、
最頻値が30,000円です。
都道府県への申請なので登録免許税は発生しませんが、
宅建士資格登録申請には法定費用として37,000円の手数料が発生します。
資格登録申請とは別に宅建士証の交付申請も必要で、
こちらの申請には4,500円の手数料が必要です。
行政書士に依頼する場合は行政書士への報酬プラス法定費用で7万円前後は
かかると思っておきましょう。
宅建士資格は5年に1度更新が必要で、自動車免許の更新と同様に講習を受けて
新しい宅建士証を交付してもらうことになります。
更新講習の受講が12,000円、宅建士証の交付が4,500円の合計16,500円が
宅建士資格の更新に必要な費用です。
ちなみに不動産業未経験で宅建士資格登録申請を行うのに必要な講習の受講費用も
12,000円となっています。
報酬の安い行政書士に依頼すると手間がかかる
宅建業許可申請を行政書士に依頼すると法定費用とは別に10~15万円の報酬を
行政書士に支払うことになります。
10~15万円というのはあくまで相場で、
相場よりも大幅に安い報酬で宅建業許可申請を受けてくれる行政書士も居るのです。
日本行政書士会連合会の統計によると、
知事許可の申請を11,000円で請け負っている行政書士が居ます。
依頼する側からすると報酬が安いに越したことはありませんが、
報酬を安く設定しているのにはそれなりの理由があるということを分かっておきましょう。
報酬を相場よりも大幅に安く設定している理由として1つ考えられるのは
「必要最低限の作業だけ請け負うから」ということです。
宅建業許可申請には申請書を始め必要書類が多数あるのですが、
報酬の安い行政書士は申請書など重要な書類しか作らなかったりします。
また必要書類を作るだけで役所での申請手続きを代行してくれないケースもあります。
申請書を始めとした書類を作ってくれるだけでもかなり助かりますが、
手続き自体も手間がかかるのでできれば手続きも代行してくれるともっと助かります。
必要な作業しかしないから報酬が安い行政書士ならまだ良いのですが、
行政書士としてのキャリアが浅いために報酬が安くしている場合は要注意です。
宅建業許可申請してを行ってから実際に許可が下りるまでには結構な時間が
かかりますから、行政書士には迅速に作業してもらわないといけません。
キャリアが浅く宅建業許可申請に不慣れな行政書士だと書類作成や手続きに
手間取り余計な時間がかかってしまう恐れがあります。
キャリアの浅い行政書士が全員ダメというわけではありませんが、できれば多少報酬が
高くても宅建業許可申請に精通した行政書士を選ぶのがおすすめですよ。
まとめ
宅建業許可申請を行政書士に依頼すると10~15万円の報酬が必要となります。
別途法定費用もかかりますから、宅建業許可申請を行政書士に依頼したら
合計で15~25万円ぐらいはかかると思っておきましょう。
不動産業は少し特殊で、
供託金1000万円を国の機関に預けるか業界団体に加入しないと開業できません。
業界団体への加入には150万円ぐらいかかりますから、宅建業許可を取って
不動産会社を開業するなら少なくとも200万円ぐらいは用意しておいた方が良いですね。