こんにちは、洋平です。
今回は、「行政書士で開業してはいけない」と言われる理由やその真偽などについて
詳しく見ていきましょう。
「行政書士で開業してはいけない?」
「行政書士で開業してはいけない」と言われる最大の理由は
「十分な収入を得られないから」です。
2018年に行われた現役行政書士を対象とした調査で、
8割近くが「年商500万円未満」
と回答しています。
年商500万円だと、
経費を差し引いた年収では350~400万円程度といった金額になります。
年齢や家族の有無にもよりますが、350~400万円は決して高年収とは言えません。
行政書士の8割近くが年収350~400万円未満ということですから、
確かに十分な収入を得られる職業ではなさそうですね。
ライバルが多すぎる
行政書士として開業することが勧められないもう1つの理由として、
「ライバルが多すぎる」ということが挙げられます。
2022年4月現在、日本行政書士会連合会に登録している行政書士は
個人・法人合わせて5万人を超えています。
行政書士試験合格者は毎年4,000~5,000人で、
行政書士を廃業する人は多くて年間1,500~1,700人程度です。
合格者が全て行政書士登録をするわけではないものの、
半分も登録すれば年々行政書士の人数が増えることになります。
(実際に右肩上がりに増えている)
それでいて行政書士の業務は大きく増えているわけでもないので、
開業しても仕事が入ってこないという状況に陥ってしまう行政書士が多いのです。
行政書士として開業したけど半年以上仕事の依頼が1件も無く廃業したケースも
あるぐらいです。
ライバルが多すぎて仕事にありつけないから行政書士で開業しない方が良いと
言われるわけです。
行政書士は廃業率が高い
ライバルが多くて十分な収入を得られない結果、行政書士を廃業するケースが多く、
行政書士は廃業率が高いとされています。
行政書士の廃業率に関する調査は行われていないので、正確な数字は分かりません。
ただ行政書士全体の6割が廃業しているとか、
3年以内の廃業率が9割を超えるなどと言われているのです。
実際に6~9割も廃業しているとなると、
これから行政書士で開業しても生き残れる可能性の方がはるかに低いです。
それが事実なら「行政書士で開業しない方が良い」「してはいけない」という意見が
出てくるのも頷けますね。
「行政書士で開業してはいけない」と言われる理由は全て正しくない!?
先に挙げたような理由で「行政書士で開業してはいけない」と言われますが、
これらの理由は全て「的を射ている」とは言い難いです。
まず収入についてですが、年商500万円未満の割合が圧倒的に多いのは事実です。
ただ行政書士の中には、
「それほど多くの収入を得る必要が無い」と考えている人も多く居ます。
行政書士になるには国家試験に合格するのが一般的です。
しかし公務員(国家・地方問わず)として17年以上行政事務の経験があれば、
国家試験を受けなくても行政書士になれる資格が貰えます。
要するに、
公務員を定年退職した人の多くは行政書士になれる資格があるということです。
実際に公務員を定年で退職した後に行政書士として開業するケースが
結構多くなっています。
さらに定年退職後に開業した行政書士の中には、既に年金を貰っている人も居ます。
一定以上の収入を得ると年金額が減らされるため、年金を貰っている行政書士の
多くは「それほど多くの収入を得る必要が無い」と考えているわけです。
調査にはそういった考えの行政書士も含まれているので、
結果的に年商500万円未満が圧倒的多数となっているだけなのです。
ですから年金を貰いながら働いている行政書士を除けば、
十分な収入を得ている行政書士の割合がグッと高くなる可能性があります。
ライバルをこれ以上増やしたくない行政書士の陰謀?
「行政書士で開業してはいけない」と言っているのは、
ライバルをこれ以上増やしたくない行政書士なのではないでしょうか?
現状でも行政書士の数は5万人を超えていて、
これからも右肩上がりに増えていくことが予想されます。
十分な収入を得られていない行政書士や何とか生活できるだけの収入を得ている
行政書士にとっては、これ以上ライバルが増えると死活問題となります。
そこで、ブログやSNSなどで「行政書士で開業してはいけない」と発信して、
これ以上ライバルが増えないようにしようとしているわけです。
どんな仕事でもそうですが、十分な収入を得ている行政書士は想像以上に忙しく、
ブログやSNSを更新する時間すら惜しんで仕事に励んでいます。
そのため、十分な収入を得られていない行政書士が発信する情報ばかりが
目につくようになります。
そうすると、一般的に「行政書士=稼げない」というイメージが定着し、
行政書士を目指す人が減ることに繋がるのです。
要するに、儲けている行政書士が情報発信をしないので、ライバルを増やしたくない
行政書士のイメージ戦略が成功してしまっているのですね。
「行政書士の廃業率が高い」は完全なデマ
「行政書士の廃業率が高い」ことも行政書士で開業してはいけない理由とされますが、
実はこれ完全なデマです。
正式な調査は行われていないものの、
行政書士の廃業率が6割だとか3年で9割だとかいったことはありません。
日本行政書士会連合会の機関紙に毎月の廃業者数が掲載されているのですが、
多い月でも100人を超える程度です。
年間では1,500~1,700人程度が廃業しているだけで、
廃業率で言うと年間3~3.4%ぐらいとなります。
日本の全業種の廃業率が3%台で推移し続けていますから、
行政書士の廃業率は「標準的」で決して高くありません。
6割とか3年で9割は、
ものすごく狭いコミュニティの話や行政書士の肌感覚から出た数字に過ぎないのです。
ですから「廃業率が高いから、行政書士で開業してはいけない」というのは
正しくないことになるわけです。
行政書士には独立開業以外の手段がほぼ無い
「行政書士で開業してはいけない」と言われても、
行政書士になるには独立開業以外の手段がほとんどありません。
開業してはいけないなら「行政書士として就職すれば良いのでは?」と考える人も
居るはずです。
行政書士として就職することは可能ですが、非常に狭き門となっています。
日本行政書士会連合会に登録されている行政書士は全部で5万人以上ですが、
その内行政書士法人はたったの1,000軒しかありません。
1,000軒の法人が全て毎年行政書士の求人を出しているわけではなく、
年間100軒も求人を出していれば多い方です。
中にはいわゆる「コネ」で求人が埋まってしまうケースもあるので、
行政書士として行政書士法人に就職することは非常に難しいのです。
行政書士として一般企業には就職できない
「行政書士法人がダメなら一般企業は?」と考えますが、
行政書士として一般企業に就職することはできなくなっています。
各種許認可申請や定款の作り替えなど、
一般企業でも何かと行政書士の力が必要になる場面があります。
なので行政書士を社員として雇えば何かと便利、
と考える一般企業も恐らくあるはずです。
しかし日本行政書士会連合会の定める規則によって、行政書士登録した者が
一般企業に就職して行政書士業務を行うことは禁止されています。
ですから行政書士として一般企業に就職し、
行政書士の業務を行うことはできないのです。
ただし、副業OKの企業であれば、平日は一般社員として働き、
土日だけ行政書士として活動するといったことはできます。
また行政書士試験に合格した法律知識を武器に、
行政書士登録せずに一般企業に就職するといった方法もあります。
とは言え、司法書士試験合格や社労士の資格を持っている人の方が
一般企業の就職では有利で、行政書士試験合格はあまり有利には働きません。
行政書士で開業して成功するには
行政書士で開業して成功するには、
・取り扱い業務を絞る
・積極的な営業活動を行う
・人脈を広げる
の3点が重要です。
行政書士には他の士業が行うことができない「独占業務」があり、
その1つが「各種許認可申請」です。
この許認可申請だけでも1万を超える種類があり、
許認可申請以外の業務を含めると行政書士が行える業務は膨大な数になります。
さすがにその全てを取り扱うことはできませんし、
実際に全ての業務を請け負っている行政書士は居ません。
また行政書士は国家資格で、法律によって身分が保証されているものの、
事務所で待っているだけでは仕事は入ってこないです。
なので、
特に開業したてで知名度が低い内は積極的に営業活動を行うことが重要となります。
それから、
他の行政書士や士業から仕事を紹介してもらうといったケースも少なからずあります。
そのため士業はもちろん他業種との人脈を広げておくことが、
より多くの業務を請け負うことに繋がります。
事務所の所在地に合った業務を選ぶ
取り扱い業務を絞る際には、
「どこに事務所があるか」を考えてメインとなる業務を選ぶと良いですよ。
例えば、オフィスビルが並ぶような都市部に事務所があるのに、
相続関係の業務をメインにしても業務依頼が多く入るとは考えにくいです。
ですから都市部に事務所を構えるなら、
飲食店関係や風営法関係の許認可業務をメインにすれば多くの依頼が見込めます。
それ以外にも道路の使用許可や占有許可、外国人労働者のビザ取得・更新なども
都市部なら需要が多そうですね。
都市部から離れた郊外や田舎と言われる地域では、相続関係や個人間の
贈与・売買・賃貸借などに関する書類の作成は需要が見込めます。
また、家を建てるなど田畑を別の用途に転用する場合などに必要な「現況測量図」の
作成も郊外では需要がありますよ。
このように事務所周辺の環境に合った業務をメインに据えることで、
それなりに仕事の依頼が入る可能性が高くなります。
ホームページよりポスティング
行政書士の営業活動では、個人的な意見ですが、
ホームページよりもポスティングの方が有効だと思います。
確かにインターネット全盛の現代では、
何をするにも「まずネットで調べてから」という人が多いです。
なので行政書士もホームページを作っておくことで、
仕事の窓口が広がることになります。
ただ行政書士は全国に5万人以上居ますから、
都道府県どころか市町村を跨いで仕事の依頼が入るといったケースは少ないです。
ですからホームページで広く薄く宣伝するよりも、ポスティングで事務所周辺という
狭い地域にインパクトのある宣伝をした方が効果的なのです。
事務所名・取り扱い業務・料金の目安・住所・連絡先など必要な情報を記載した
チラシを作って、事務所周辺の住宅や事業者に配りましょう。
近所に行政書士事務所があることを知ってもらえれば、
何かしら法律問題で困った時に相談・依頼しに来てくれますよ。
イベントや会合には積極的に顔を出す
どんな業種でも人脈を広げることは重要ですが、
口で言うほど人脈を広げることは簡単ではありません。
ただ、行政書士登録すると所属することになる都道府県の行政書士会は、
それなりの頻度で勉強会や研修会を開いてくれます。
あまりニュースでは取り上げられませんが、
国会では年間に100~200の法律が改正されています。
その中には行政書士業務に関わるものも少なからずあるため、法律改正が業務に
どのような影響を及ぼすかを学ぶために勉強会や研修会が開かれるのです。
場合によっては、司法書士や社労士など他の士業も参加する会合になることもあります。
ですから、行政書士会が開く会合に積極的に参加して、
他の参加者と交流を持つことで人脈を広げることができますよ。
さらに地元の商工会議所も「異業種交流会」を開催してくれますから、
これに参加すれば他業種との繋がりが持てます。
多くの行政書士は取り扱い業務を絞っているため、
取り扱っていない業務依頼が入った場合には他の行政書士を紹介します。
また一般の人は、行政書士と司法書士と社労士との業務の違いがよく分かっておらず、
司法書士や社労士に行政書士業務の依頼が入ることもあるのです。
行政書士の独占業務を司法書士や社労士が取り扱いことはできないので、
そうすると知り合いの行政書士を紹介することになります。
このように行政書士を含む士業や他業種の人脈を作っておくことで、
人脈を通じて仕事が入ってくるといったが往々にしてあります。
むしろ行政書士として開業したばかりの頃は、
紹介で入ってくる仕事がメインだったりするのです。
人脈の有無が仕事の多寡に大きく関わってきますから、
特に仕事の少ない内は積極的に会合やイベントに参加して人脈作りに励みましょう。
まとめ
行政書士には十分な収入を得られていない人も多く、
「開業してはいけない」と言われても仕方がない側面もあります。
しかし行政書士の需要は決して少ないわけではなく、
需要があるからこそ5万人以上の行政書士が存在しているのです。
成功するためのいくつかのポイントをしっかりと押さえておけば、
生活するのに十分な収入を行政書士として稼ぐことは可能です。
決して簡単ではありませんが、とてつもなく険しい道でもないので、
ぜひ「稼げる行政書士」を目指して頑張ってください。