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行政書士になるのはやめとけ?なぜそんなことを言われる?

こんにちは、洋平です。

今回は、「行政書士を目指している」とか「行政書士になる」と言うと、必ずと言って
良いほど周りが「やめとけ」となる理由について詳しく見ていきたいと思います。

行政書士になるのはやめとけ?

行政書士は弁護士や司法書士などと同じ「士業」の1つで、
基本的には国家試験に合格しないと就くことができない職業です。

弁護士や司法書士は「目指している」と言っても「やめとけ」とはあまりなりませんが、
行政書士だけはなぜか「やめとけ」となることも多いですね。

「やめとけ」と言われる理由はいくつか考えられますが、主なものとして
 ・行政書士の人数が多い
 ・稼げない
 ・将来性が低い
 ・廃業率が高い
 ・就職できない
などといったことが挙げられます。

個人的には、「確かに」と思えるものもありますが、
「行政書士という仕事を分かっていないだけ」と感じるものもあります。

ではそれぞれの理由について、
具体的に「行政書士はやめとけ」に繋がるのかを見ていきましょう。

行政書士の人数が多い

まず「行政書士の人数が多い」ですが、2022年現在、行政書士会連合会に
登録されている行政書士は個人と法人合わせて約5万人となっています。

これは士業の中では税理士の次に多く、
確かに人数だけを見れば「多い」のは間違いありません。

実際に都市部だと、街中を多少意識して歩いていれば
数軒の行政書士事務所の看板を見かけることがあります。

役所の周辺では都市部以外でも、「石を投げれば行政書士に当たる」のではないかと
思えるほど行政書士事務所をたくさん見かけます。

この状況を見れば、ライバルが多すぎるのでこれから行政書士になるのは
「やめとけ」と言いたくなる気持ちも分かりますね。

行政書士が多いのはなぜ?

「多すぎる」と感じるほどに行政書士が多いのには、
資格試験の合格率と特認制度が関係しています。

行政書士試験の合格率は大体10%程度で、
年度によっては15%程度まで上がることもあります。

合格率10%と聞くと低いように思いますが、
士業の中では弁護士に次ぐ2番目の高さなのです。

ちなみに、行政書士よりも弁護士の方が合格率が高いのは、
司法試験の制度が新しくなってからです。

現在の司法試験は、法科大学院に通うか予備試験に合格しないと受験することが
できないようになっています。

要するに、「合格する見込みのある人」しか受験できないようになっているため、
現在の弁護士の合格率は行政書士よりも高くなっているだけなのです。

旧制度下での司法試験の合格率は1~2%、現制度でも予備試験の合格率は
3~4%ですから、実質的な合格率は行政書士よりも弁護士の方が圧倒的に低いです。

話を戻して、行政書士試験の合格者は毎年4,000~5,000人ほどで、
廃業するのは毎年1,000人ほどです。

合格者が全て行政書士になるわけではありませんが、
行政書士になるの合格者の1/3だとしても年々人数が増えていくことになるわけです。

もう1つは「特認制度」で、公務員として17年以上勤続すると行政書士試験を
受けなくても行政書士の資格が取得できるようになっています。
(公務員時代の職務内容によっては取得できないこともある)

そのため公務員を定年退職した後に行政書士として開業するケースが多く、
結果的に行政書士の人数が多くなってしまっているのです。

ちなみに、特認制度が設けられているのは行政書士だけでなく、
税理士や司法書士にも特認制度があります。

稼げない

「行政書士はやめとけ」と言われる大きな理由の1つとして、
「稼げないから」というものがあります。

行政書士は個人で開業するケースがほとんどで、
しかも料金はそれぞれの行政書士が自由に決めることができます。
(相場のようなものはある)

しかも行政書士会連合会が公式に調査していないので、
行政書士がどのぐらい稼げるのかはハッキリとは分かりません。

ただ行政書士会連合会が行ったアンケートによると、
年商500万円未満が何と全体の8割近くとなっています。

年商で500万円と言うことは、そこから事務所の維持費や光熱費などの経費を引いた
年収は350~400万円といったところでしょうか。

若くて養うべき家族が居なければ十分な金額ですが、
ある程度年齢を重ねてなおかつ家族ができると十分とは言えない金額です。

こうした数字を見ると「行政書士=稼げない」というイメージが強くなり、
行政書士を目指している人を見ると「やめとけ」と言いたくもなりますね。

将来性が低い

「近い将来AIに取って代わられるであろう仕事」がいくつか予測されていますが、
行政書士はその中の1つに数えられています。

行政書士の起源は「代書屋」で、十分な教育が受けられずに読み書きできない人に
代わって履歴書などの書類を作成するのが主な仕事でした。

現在でも、許認可申請など行政手続きに必要な書類の作成代行が
行政書士の主な仕事となっています。

行政手続きに必要な書類は基本的に書式が決まっていて、
記入する内容も決まっていることが多いです。

ですから今後AIがより進化すれば、いくつかの必要事項をパソコンに入力するだけで
書類が作れて、行政書士に頼る必要が無くなるというわけです。

またペーパーレス化の関係で行政手続きが簡素化されることも考えられ、
そうすると手続きによっては書類を作ることさえ不要になる可能性もあります。

実際に、会計ソフトにAIが導入されて税務処理や確定申告が簡単にできるようになっていて、税理士の仕事が減っていると言われていたりします。

行政書士はまだAIに仕事を奪われる状況にはなっていませんが、
将来的には確かに行政書士の仕事が無くなる可能性は否定できないですね。

廃業率が高い

一般的に「行政書士は廃業率が高い」とされているので、
開業しても廃業するリスクが高いので「やめとけ」と言われるわけです。

行政書士の廃業率を公式に調査したものがありませんから、
正確な数字は分かりません。

ただ一部では「3年以内の廃業率」が60%とか90%とか言われていたりします。

正確な数字は分からないものの、現役行政書士が「肌感覚ではそれぐらい」と
言っているぐらいなので、実際に廃業率は結構高いのかもしれないですね。

廃業するリスクの高いところにわざわざ飛び込んで行く必要も無いですから、
「行政書士はやめとけ」と言われるわけです。

就職できない

行政書士になっても就職することが難しいので、
行政書士になることを止められるケースがあります。

行政書士は基本的に「兼業」が禁止されていて、
行政書士として一般企業に就職することができません。

もちろん公務員が行政書士を兼ねることもできませんから、
就職するなら行政書士法人しかないのです。

しかし行政書士法人は、行政書士会連合会の公式サイトによると
2022年4月現在でちょうど1,000軒となっています。

約50,000の内の1,000なので、
個人で開業しているよりも法人の方が圧倒的に少ないです。

しかも全ての行政書士法人が毎年行政書士を募集することは無く、
行政書士法人の求人は多くても全国で100件ほどあれば良い方だったりします。

毎年2,500人前後が新たに行政書士登録していますから、
行政書士法人への就職はかなりの「狭き門」なのですね。

行政書士の資格が就職に有利に働くことも少ない

行政書士試験に合格したけど、
行政書士登録はせずに一般企業に就職するといったことは可能です。

ただ「行政書士試験合格」が一般企業への就職に有利に働くことも少ないです。

先にも書いたように行政書士は兼業禁止なので行政書士として雇うこともできませんし、
雇っても行政書士の業務をさせることができません。

行政書士試験に合格したということはある程度法律に明るいので、
法務関係の業務を担当する社員として採用される可能性はあります。

ただ、それも弁護士や司法書士といった「上位互換」が居るため、
行政書士試験合格がそれほど有利には働かないのです。

就職で有利になることもなければ、ライバルが多いので開業しても稼げない可能性が
高く、その上将来性も無いとなると「行政書士はやめとけ」となるのは当然ですね。

行政書士はやめとけ」と言われる理由は正しくない?

「行政書士はやめとけ」と言われる理由をいくつか紹介しましたが、
どれも「なるほど」と納得できるものだったのではないでしょうか。

しかし個人的な意見としては、
先に紹介した理由にはいずれも正しくない点が含まれていると思っています。

「人数が多い」という点はちょっと置いておくとして、
まず「行政書士=稼げない」というイメージが正しくありません。

先に紹介したように行政書士の8割近くが年商500万円未満で、
稼げていない行政書士が多いのも事実です。

ただ稼げていない行政書士には「積極的に業務を行っていない人」も含まれています。

例えば、公務員を定年退職して特認制度を利用した行政書士や
高齢の行政書士の多くがそれに当たると考えられます。

公務員定年後に開業した行政書士や高齢の行政書士の中には、
既に年金を受給している人も少なからず居ます。

働きながら年金を貰うことはできますが、
収入が一定額を超えると年金の受給額が減らされてしまうのです。

年商500万円未満の行政書士には、こうした年金がらみで行政書士としての収入が
増えるのを抑えているケースが結構多くなっています。

積極的に業務を行えば年収で500万円以上を稼ぐことは可能ですし、
実際に年収1000万円以上稼いでいる行政書士もたくさん居ます。

それほど多くはないものの億単位の年収を稼ぐ行政書士も居ますから、
行政書士が稼げないというのは正しくないのです。

行政書士の将来は明るくもないが暗くもない

次に将来性ですが、確かにIT技術の進歩によって将来的には行政書士の仕事が
AIに奪われる可能性は否定できません。

ただ税理士のように既に奪われつつあるといった状況にはなっておらず、
数年後に奪われ始めるといった気配も今のところは無いです。

税理士で言うところの会計ソフトに当たるような、行政手続きに必要な書類を
簡単に作れるソフトが開発されているといった話は現状では聞かれません。

何より行政書士業務は多岐に渡っていて、
行政関係の許認可申請だけでも1万種類以上あります。

その全てに対応したソフトを開発するのは簡単ではないので、
しばらくは行政書士の仕事がAIに完全に奪われてしまう心配は無さそうです。
(あくまで「しばらく」ですが・・・)

さらに時代が進むことによって、行政書士の業務が増えていることもあります。

例えば「ドローン」や「外国人の在留資格」に関する業務です。

ドローンが登場した当初は「単なるおもちゃ」の扱いで、
飛ばすのに特に許可を取る必要はありませんでした。

しかし現在では、場所や時間帯、高度など条件次第ではドローンを飛ばすのに
国や自治体、警察などの許可が必要となっています。

さらに2022年6月からは、本体重量が100g以上のドローンは事前に登録しないと
飛ばすことすらできなくなります。

こうしたドローンの飛行許可や登録の申請に必要な書類の作成は行政書士の仕事で、
時代が進んだことで新たに追加された仕事です。

外国人の在留資格申請も行政書士の業務の1つで、これは以前からありましたが、
最近になってその需要が高まっています。

少子化が進んでいることに加えて団塊の世代がリタイアする年齢になったことで、
日本の労働人口が大きく減ってしまっています。

それを補うために、
日本政府は外国人労働者の受け入れを拡大する方針を打ち出しています。

現状では外国人が日本に長期滞在して働くには、在留資格いわゆる「ビザ」が必要です。

このビザの申請も行政書士業務の1つであり、時代が変わったことで増えた業務でもあるのです。

将来的にAIに仕事を奪われる可能性は否定できないものの、現状では新しい時代を
迎えて行政書士の力が必要となる場面が増えているのも事実です。

ですから行政書士の将来性は、決して明るくはありませんが、
だからと言って悲観するほどのこともありませんよ。

行政書士の廃業率が高いのはウソ?

続いて「廃業率の高さ」ですが、
行政書士の廃業率が60%や90%というのは全くもって正確ではありません。

行政書士の廃業率について公式に調査されていませんが、
行政書士会連合会の機関誌に毎月の廃業数が掲載されています。

これによると月に100人程度が廃業していて、
年間では大体1,500~1,700人ぐらいの廃業者が出ていることになります。

行政書士は全部で約5万人ですから、
年間1,700人廃業したとしても廃業率は約3.4%となるのです。

日本における全業種の平均廃業率が3%台で推移していることを考えると、
行政書士の廃業率は「平均的」でしかありません。

廃業率が60%や90%と言われるのは、あくまで現役行政書士の肌感覚で、
「周りで廃業する行政書士が多いな」と感じているだけなのですね。

行政書士の数が多いのはそれなりに稼げるから

一番目の理由である「行政書士の数が多い」ですが、これは「稼げない」
「廃業率が高い」が否定されたことで、行政書士を勧めない理由にはなりません。

行政書士が本当に「稼げない」「廃業率が高い」という職業なのであれば、
年々行政書士の数が減っていかないとおかしいですよね。

しかし実際には、行政書士の数は右肩上がりに増えていっています。

と言うことは、少なくとも生活できるぐらいには稼げているので廃業する行政書士が
多くなく、年々増えていって人数が多くなっていると解釈できるわけです。

行政書士の数が多いのは事実ですが、それが「稼げない」や「廃業」には直結せず、
「行政書士はやめとけ」という理由にはならないのです。

まとめ

「行政書士になるのはやめとけ」と、一般的に言われる理由について詳しく見てきました。

個人的には、的を射ている理由もあるものの、ほとんどが「行政書士という職業に
対するイメージ」によってこじつけられたものに思えましたね。

行政書士として十分な収入を得ることは簡単ではないですが、
決して「できないこと」ではありません。

しっかりと覚悟を持って業務に取り組み、収入を増やすために必要なことをすれば、
行政書士として生きていけますよ。

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