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「行政書士は食えない」という嘘が広まっているのはなぜ?

こんにちは、洋平です。

今回は、時折見聞きする「行政書士は食えない」という「嘘」について
詳しく見ていきたいと思います。

「行政書士は食えない」と言われる理由

「3年以内の廃業率が90%以上」、
これが「行政書士は食えない」と言われる理由というか根拠となっています。

この数字だけ見ると、
「開業して3年以内に廃業する行政書士が90%以上」だと思ってしまいますよね。

しかし実はこの「3年以内の廃業率が90%以上」というのは、
単なる現役行政書士の肌感覚で、しっかりとした統計を元にしたものではないのです。

しかも開業して3年以内ではなく、特定の3年間を切り取って、
その間に身近での廃業率が90%以上と感じているだけ。

そもそも行政書士は全体的に年齢層が高く、
定年退職後に開業するケースも少なくありません。

行政書士の仕事は主にデスクワークですが、
たくさんの業務をこなすにはそれなりに体力が必要です。

そのため高齢になった行政書士は、徐々に仕事量を減らしていって、
最終的に廃業することになります。

正式に廃業しなくても看板を出しているだけで、
「実質的には廃業状態」の行政書士も少なくありません。

特に高齢の行政書士が身近に多いと、
「3年以内に90%以上が廃業」という数字を肌感覚として感じるでしょうね。

実際の行政書士の廃業率は?

廃業率90%以上は何の根拠も無い数字として、
では実際の行政書士の廃業率はどのぐらいなのでしょうか?

残念ながら行政書士の廃業率は調査が行われていないので、
正確な数字は分かりません。

ただ、日本行政書士会連合会が発行している機関誌に月ごとの廃業者数が
掲載されています。

それによると多い月でも100人程度で、
年間にすると1,200人も廃業していれば多い方です。

連合会に登録されている行政書士は個人・法人合わせて約5万人で、
年に1,200人廃業したとしても年間の廃業率は約2%なのです。

中小企業白書によると日本全体の廃業率は3%台で推移していますから、
実際の行政書士の廃業率は平均よりも低いことになるわけです。

「行政書士は食えない」が本当なら廃業率は平均より大幅に高くなるはずです。

しかし実際には平均より低くなっているのですから、
「行政書士は食えない」というのは嘘である可能性が高いことになります。

半端な覚悟で開業する行政書士も居る

半端な覚悟で行政書士として開業し、
現実を知って数年で廃業してしまうケースがあるのも事実です。

行政書士は弁護士や税理士と同じ「士業」で、
国家試験に合格しないと就けない職業です。

そのため「行政書士は特別な仕事」と思い込み、
事務所を構えれば次から次へと依頼が入ると勘違いしてしまうのです。

弁護士や税理士も事務所を構えただけでは仕事になりませんし、
行政書士ももちろん同じです。

開業したのに仕事の依頼が無い、依頼があっても単発で継続性が無いなどで
思ったほど稼げない現実を目の当たりにして絶望して廃業してしまいます。

どんな職業でも、待っているだけで仕事が入るのは「功成り名遂げた人」だけです。

功成り名遂げるには人一倍の努力が必要で、人一倍の努力をする覚悟を持って
開業しないことには食えない行政書士にしかなれないのです。

「食えない」という嘘を広めている行政書士が居る?

これは個人的な意見ですが、「行政書士は食えない」という嘘を広めている
現役行政書士も居るのではないかと思っています。

先にも書きましたが、行政書士登録している人数は個人・法人合わせて約5万人です。

単純に計算すると、各都道府県に1,000人以上の行政書士が居ることになります。

でも会社を作ったりお店を開いたり、直系の親族が亡くなって遺産相続が発生した
などといったことがないと、個人で行政書士の力が必要となるケースは少ないです。

と言うことは、現状でも「ライバル」が多く、これ以上増えると「仕事が減る」という
危機感を持っている行政書士も少なからず居るはずですよね。

仕事が減る危機感を持っている行政書士の中には、ライバルを増やさないために
「行政書士は食えない」と嘘を広めている人も居るのではないかというわけです。

時代が変わっても行政書士の需要はあまり変わらない

かつては必要とされた仕事でも、時代が変わることで需要が減って、
最終的にその仕事では「食えない」状態になることもあります。

しかし行政書士は時代が変わっても一定の需要があり、
需要が極端に減らないので「食えない」状態になることは少ないのです。

実は行政書士を含む「士業」には、
それぞれ「独占業務」というその士業にしかできない業務があります。

行政書士の独占業務は
 ・官公署に提出する書類
 ・権利義務に関する書類
 ・事実証明に関する書類
の作成です。

「官公署に提出する書類」は主に様々な許認可を受けるために必要な書類で、
現状では実に1万種類以上あるとされています。

しかも官公署に提出する書類は、それぞれの書式に則って作成しなければならず、
ちょっとした間違いや記入漏れがあると受理してもらえません。

そのため申請する本人が作成するのは難しく、
許認可申請に必要な書類作成は行政書士にお願いするケースが多いのです。

「権利義務に関する書類」は、遺産分割協議書などの相続関係、
売買契約書などの契約関係、請願書や上申書などの行政関係の書類ですね。

相続関係や契約関係の書類は、お金が絡むので、
不備があると後々揉める原因となってしまいます。

なので書式に則って不備の無いように体裁を整えるのに、
行政書士に作ってもらうのが一般的なのです。

「事実証明に関する書類」は、会社の定款や株主総会・取締役会の議事録、会計帳簿、
決算書などの書類となります。

それから保険の過失割合を決めるのに必要な「交通事故調査書」、土地の境界を
明確にするための「現況測量図」なども行政書士だけが作れる書類です。

独占業務ではないが行政書士が行える業務

弁護士や司法書士など他の士業も行えるけど、
行政書士も行える業務というものもあります。

例えば、当事者間で揉めていない契約書や協議書、内容証明郵便の作成は
弁護士とともに行政書士にも行える業務です。

ただし当事者間で揉めている、
すなわち「紛争性」がある場合の契約書や協議書は弁護士にしか作成できません。

揉めている当事者同士の間に入っての「折衝」は弁護士の独占業務で、
これを行政書士が行うのは「非弁行為」で法律違反です。

それから国や自治体の補助金の申請書や金融機関で融資を受けるための
融資事業計画書の作成は、税理士だけでなく行政書士にも行えます。

さらに外国人が日本国籍を取得する際の帰化許可申請書の作成も、
司法書士とともに行政書士に行える業務です。

このように行政書士が行える業務は多岐に渡りますから、
いくら時代が変わっても需要が大きく減る心配がありません。

行政書士は将来性が無いのでは?

特に最近は「ペーパーレス化」が進んでいて、一部の行政手続きも簡略化されており、
将来的には行政書士が必要無くなるのではないかとも言われます。

実際に、行政書士に依頼するようなことではありませんが、住民票の写しや
戸籍謄本などはマイナンバーカードがあればペーパーレスで取得することが可能です。

また会計ソフトを使えば簡単に確定申告ができるようになってきていて、
将来的には確定申告に税理士が必要無くなると言われていたりします。

確かに今後行政手続きが簡略化が進むことで、
多少行政書士の業務に影響が出る可能性もあるかもしれません。

しかし簡略化される行政手続きは元々行政書士に頼むまでもないもので、現状で
行政書士が必要とされる手続きは今後も行政書士が不要にはならないと思います。

それから会計ソフトのように、
行政手続きに必要な書類を簡単に作れるソフトも今のところ開発されていません。

遠い将来には行政書士もAIに取って代わられる恐れがあるものの、
まだしばらくは安泰と言って良いのではないでしょうか。

時代が変わることで行政書士が必要とされる分野が増えることも

時代が変わって行政書士の力が不要になるどころか、現状ではむしろ時代が
変わったことで行政書士の力が必要となる場面が増えています。

例えば「ドローン」を飛ばすのに、
特定の条件下では国や自治体などへの許可申請が必要です。

ドローンが登場した当初は「単なるオモチャ」という認識で、
飛ばすのに国や自治体などの許可は必要ありませんでした。

しかし様々なドローンを使った迷惑行為が横行するようになり、現在では場所や時間帯、
高度によってはドローンを飛ばすのに許可申請が必要となっています。

このようなドローンの飛行許可申請は、
時代の変化によって行政書士の業務が増えた典型的な例ですね。

さらに以前から必要だったものの、時代が変わったことで需要が増えた業務もあります。

例えば外国人の在留資格認定の申請いわゆる「ビザ」の申請は、
時代が変わったことで需要が増えた業務です。

もちろん元々外国人が日本に長期滞在するにはビザの申請が必要でしたが、特に最近は労働者として外国人を雇う企業が増えています。

国の施策として外国人労働者の受け入れを拡充する方向で、
ビザの申請業務は今後も行政書士としては需要が見込めるのです。

このように時代が変わることで行政書士が必要となる分野も出てくるので、
時代の変化によって行政書士が食えない状態になることは考えにくいわけです。

「食えない行政書士」にならないためには

行政書士を開業して「食えない」状態に陥らないようにするには、
何と言っても「営業活動」が大切です。

実際に現状で「食えている」行政書士のほぼ全員が、
積極的な営業活動を現在進行形で行っています。

先にも書いたように、行政書士事務所を構えても、
次から次へと仕事の依頼が入ってくるなどといったことはありえません。

まずは近隣の住民や事業者に、
「ここに新しい行政書士事務所ができました」ということを知ってもらう必要があります。

存在を知ってもらえていないと、行政関係のことで困ったことや分からないことが
あっても「あの行政書士事務所に相談しよう」とはなりません。

何かあった時の相談先の選択肢として思い浮かべてもらうために、
近隣の住民や事業者に積極的に宣伝するのです。

行政書士が宣伝を行うのに効果的なのが、「パンフレットのポスティング」ですね。

飛び込み営業は相手の都合によっては門前払いされることもありますし、
タイミング良く行政書士が必要とされていることがほとんどありません。

そのため飛び込み営業はかえって良くない印象を与えてしまう恐れがあるので、
行政書士の営業活動としては効果的でないのです。

ポスティングであれば、
相手の都合に関係無く一度はパンフレットを手に取ってもらえる可能性が高いです。

さらに行政書士を必要としているタイミングだと、
パンフレットを見て「相談してみよう」となるかもしれません。

パンフレットを作るのに多少お金はかかりますが、
「食えない行政書士」にならないための先行投資と思って試してみてください。

幅広い人脈を作る

行政書士は基本的に個人で業務を行いますが、
仕事を増やすためには幅広い人脈作りが重要です。

試験のために勉強したり、登録後に研修を受けたりしても、
実際の業務となると分からないことも出てきます。

そんな時に、先輩行政書士との繋がりがあれば、
分からないことを教えてもらったり相談に乗ってもらったりできます。

また先輩行政書士が忙しい時にはこちらに仕事を回してくれることもありますし、
こちらが忙しくて手が回らない時には助けてもらうこともできるかもしれません。

それから、一般の人は行政書士と司法書士、社会労務士など
他の士業との違いが分かっていないことも多いです。

なので行政書士に司法書士の独占業務についての相談をしたり、
司法書士に行政書士の独占業務を依頼したりなどといったことが起こります。

他の士業との繋がりが無いと、
行政書士が行えない相談や業務の依頼があっても単に断ることしかできません。

しかし他の士業との繋がりがあると、
相談を受けたり業務を行える司法書士や社労士などを紹介してあげることができます。

そうすると依頼者は「何かあったらここに相談すれば良い」となって、
今後の仕事に繋がる可能性も出てくるのです。

さらに繋がりのある他の士業に相談や依頼が入った行政書士の業務を、
こちらに回してもらうこともできます。

他の士業はもちろん他業種の人脈を広げておくことで、仕事の窓口が広がり、
結果的に行政書士としての仕事を増やすことに繋がります。

行政書士会が開く勉強会や研修会、商工会議所主催の異業種交流会などの
会合・イベントに積極的に参加して人脈を広げる努力をしましょう。

行政書士以外の士業資格を取る

行政書士一本ではなく、他の士業の資格も取得して業務の幅を広げるのも
「食えない行政書士」にならない方法の1つです。

士業にはそれぞれ独占業務があり、案件によっては行政書士だけでは対処できず、
司法書士や社労士など他の士業の力も必要となるケースがあります。

例えば会社を作る場合、法人としての登記申請は司法書士、
登記に必要な定款の作成は行政書士の仕事となっています。

従業員の社会保険加入手続きは社労士の仕事で、会社を作るには司法書士・
行政書士・社労士それぞれに業務を依頼しなければなりません。

そこで行政書士と司法書士の両方の資格を持っていれば、
定款の作成と登記の申請を一括で請け負うことができます。

これだけでも依頼する側からすると、
本来3軒にお願いするところが2軒で済むので負担が軽くなります。

行政書士以外の士業資格を取得しておくことで、取り扱える業務の数が増え、
結果的にしっかりと食えるだけ稼げる行政書士となれるのです。

ちなみに行政書士と組み合わせて取得しておくと良い資格としては、
行政書士の業務と密接な関係がある司法書士ですね。

行政書士の業務はあまり継続性が無いので、
業務に継続性のある「中小企業診断士」などもおすすめですよ。

まとめ

「行政書士は食えない」というのは単なるイメージで、
嘘と断言してしまっても良いと思います。

しかし行政書士として開業すれば必ず食えるようになるわけでもなく、
食えるだけ稼ぐための努力や工夫は必要です。

ですから「後が無い」ぐらいの覚悟で、稼ぐために必要なことは全て行い、
食えない行政書士にならないようにしてくださいね。

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