こんにちは、洋平です。
今回は「実務経験なし、未経験での行政書士開業」について詳しく見ていきましょう。
未経験で行政書士開業はナシ?
どんな職種でも、未経験で開業して大成功を収めるのは難しいので、
まずは「実務経験を積むこと」が重要とされています。
行政書士も実務経験を積んでから開業するのがベターではありますが、
別に未経験で開業してはいけないことはありません。
実際に未経験で開業して、現在大成功を収めている行政書士はたくさん居ます。
むしろ、現在進行形で仕事をしている行政書士の多くが未経験で開業している
と言っても良いぐらいなのです。
行政書士としての実務経験が積める場がほとんど無い
現在活動している行政書士の多くが未経験で開業している理由の1つとして、
「行政書士として実務経験を積める場がほとんど無い」ことが挙げられます。
例えば飲食店を開業する場合、ラーメンを出すならラーメン屋、
お寿司を出すならお寿司屋さんへ開業前に修行に行きますよね。
修行では調理方法を学ぶだけでなく、実際にお客さんに提供する料理を作ることも
ありますし、オーダーを取るなど接客方法も学びます。
また独立前提での修行では、店舗経営についても教えてもらえるケースもあります。
役所の周辺に行けば何軒か行政書士事務所がありますから、飲食店開業の時と
同じように、行政書士事務所で修行させてもらえば良いと思いますよね。
基本的に行政書士の多くは個人で活動しており、
複数の行政書士を雇って法人として活動している行政書士事務所は少ないのです。
日本行政書士会連合会の公式サイトによると、2022年4月現在、
全国に行政書士は個人・法人合わせて約5万人居ます。
その内、複数の行政書士が所属している法人は1000軒ほどとなっています。
都道府県別で見ると、東京や大阪といった大都市でも100~250軒ほど、
それ以外では片手で数えられるほどの法人しかない県もあります。
しかも全ての法人が毎年求人を出しているわけでないので、
行政書士事務所の求人は年間で100件もあれば多い方だったりするのです。
それに対して年間の行政書士合格者は4,000~5,000人ですから、飲食店のように
「先達の元で修行してから開業」というのは行政書士では難しいというわけです。
行政書士事務所以外で行政書士として働くことはできない
「行政書士事務所じゃなくて、一般企業に行政書士として就職して実務経験を
積めば?」と思う人も居るかもしれませんね。
例えば「社会保険労務士」のように、
一般企業に就職して資格を生かした仕事ができる士業もあります。
しかし行政書士は「行政書士として一般企業に就職すること」が認められていません。
要するに一般企業に就職して、会社員の立場で行政書士業務を行うことは
できないわけです。
(副業として個人で行政書士業務を行うのはOK)
ですから行政書士が実務経験を積むには、
行政書士法人に就職するか開業するかの二択となります。
しかも行政書士法人への就職は非常に狭き門なので、
実質的には未経験で開業して実務経験を積んでいくしかないのです。
どうしても実務経験を積みたいなら
未経験で開業するしかないと言われても、
やっぱり未経験で行政書士になるのは不安という人も多いはずです。
でも行政書士として就職することは難しいといった場合には、
資格予備校の「実務講座」を利用する方法もありますよ。
資格予備校は本来「資格取得前」に利用するところですが、
最近は「資格取得後」を見据えた講座を行っているケースが出てきています。
具体的な予備校名はここでは挙げませんが、
ネットで「行政書士 実務講座」と検索すれば簡単に見つかりますよ。
実務講座の内容は予備校によって違いますが、
実務の体系論から始まって業務ごとの実務理論や実践を学ぶことができます。
さらには事務所経営やマーケティング、ビジネスマナーなどについても
教えてもらえる場合があります。
受講料は決して安くないものの、受講生同士の横の繋がり、
講師やOBOGとの縦の繋がりといった人脈作りにも役立ちますよ。
未経験で開業した行政書士が稼ぐには
未経験で開業するしかないのは仕方ないとして、
実際に未経験で開業した行政書士は稼ぐことができるのでしょうか?
最初の方にも書いたように、
現状で高収入を稼いでいる行政書士の多くが未経験で開業しています。
ですからやり方次第では、
未経験での開業でも十分に行政書士として稼ぐことは可能なのです。
では未経験で開業した行政書士が稼ぐには、どうすれば良いのでしょうか?
まず開業するに当たって、
「自分自身が一国一城の主となることに向いているかどうか」を判断します。
行政書士に限らず、一国一城の主となることで能力を発揮できるタイプと人の下で
働くことで能力を発揮できるタイプが居ます。
どちらが良い悪いではなく、人の下で働くことで能力を発揮するタイプは、
自ら事務所を構えて開業することにはあまり向いていないと思われます。
あなたがどちらタイプなのかは
・人付き合いが苦ではない
・臨機応変に自分で考えて行動できる
・一度ぐらいの失敗は気にしない
の3つが全て当てはまるかどうかで見分けられます。
3つとも当てはまる人は、
人の下で働くよりも一国一城の主となることで能力を存分に発揮できるタイプです。
未経験だろうが何だろうが、自ら事務所を構えて開業しても成功する可能性があります。
対して1つでも当てはまらない人は、
どちらかと言うと人の下で働く方が能力を発揮しやすいタイプと言えますね。
難しいですが、行政書士として行政書士法人に就職して、十分な実務と経営の経験を
積んでから開業した方が成功する可能性が高いと思いますよ。
未経験で開業した行政書士がやるべきこと
未経験で開業した行政書士事務所の経営を成り立たせるためには、まず
・積極的な営業活動
・幅広い人脈作り
・必要最低限のビジネスマナーの習得
の3つが重要となります。
行政書士に限らず、独立開業を経験した人からすればいずれも「当たり前のこと」で、
改めて「重要」と言う必要はないでしょう。
しかしこれから未経験で開業する人にすると、
「えっ!そんなことをしないといけないの?」ということもあるのです。
実際に一般企業などでの就業経験も無く、未経験で開業した行政書士の中には、
先の3つが1つもできずに早期廃業に追い込まれたケースもあります。
積極的な営業活動
特に未経験で行政書士として開業する場合には、
一般的に「行政書士がどういう職業なのか?」を理解していなかったりします。
弁護士など他の士業でもそうですが、ただ事務所で椅子に座っているだけで
次から次へと依頼が舞い込むといったことはまずありえません。
十分な実績と知名度のある行政書士なら、
事務所の椅子に座っているだけで依頼が入るといったこともあるかもしれないです。
しかし開業したばかりの行政書士は、積極的な営業活動を行わないことには、
「そこに行政書士が居る」ということにも気付いてもらえません。
現状で「稼げない」と嘆いている行政書士や廃業した行政書士は、
この積極的な営業活動ができていない・していないことが多いです。
仕事を依頼してもらうためには存在を知ってもらうことが必要で、
存在を知ってもらうには積極的な営業活動が必要なのですね。
行政書士の営業活動
一般的に「営業活動」と言えば、
会社や個人宅を訪ねる「飛び込み営業」をイメージします。
ただ現在進行形で行政書士を必要としている会社や個人はそれほど多くないので、
飛び込み営業をしても成功する可能性はほとんどありません。
むしろ対応に余計な時間を取られるので、かえって迷惑がられる恐れがあるぐらいです。
行政書士の営業活動として、一般的に効果があるとされているのは「パンフレット」を
作って送付・配布することです。
自宅のポストに、近所で新しい飲食店がオープンしたことを知らせるチラシが
入っていることがありますよね。
チラシを見ることで「新しく店ができたんだ」と飲食店の存在を認知し、
「機会があったら行ってみよう」と実際に利用する動機にもなります。
それと同じように、新しく行政書士事務所が開業したことを知らせるパンフレットを
事務所周辺の会社・個人宅を中心に送付・配布します。
そうすることで行政書士事務所の存在を知ってもらうことができます。
さらにパンフレットを手元に取ってもらうことができれば、何かしら法律関連の問題が
起こった時に「そこの行政書士に相談しよう」と思ってもらえます。
パンフレットほどの効果は期待できませんが、ホームページを作って公開したり、
ブログやSNSで情報を発信するのも良いですよ。
少数ではあるものの、実際にホームページやブログ、SNSを通じて業務の依頼が
入ることもあります。
ホームページやブログ、SNSはパンフレットに比べて費用が安く済みますから、
費用をかけずに営業活動する場合には活用しましょう。
幅広い人脈作り
行政書士が仕事をする上で「人脈」はかなり重要で、
特に開業したての行政書士にとっては「命」と言っても良いぐらいです。
ある程度実績を積み上げると、
「これなら誰にも負けない!」という得意業務ができてきます。
しかし開業したてでは、何が得意か分かりませんし、
とにかく色んな業務を請け負うことになります。
そうすると、
書類作成や手続きで分からないことや自分の手には負えないことが出てきます。
その際に行政書士の人脈があれば、分からないことを教えてもらうことができますし、
手に負えない業務を代わりに請け負ってもらうこともできます。
もし分からない・手に負えないで一度受けた仕事をキャンセルすることになると、
行政書士としての信用を一気に失ってしまいます。
また繋がりのある行政書士が、
時間的に受けられない仕事をこちらに回してくれる可能性もあるのです。
ですから行政書士会主催の勉強会や研修会といった会合にできるだけ出席して、
行政書士同士の横の繋がりを作っておきましょう。
行政書士以外の人脈も行政書士の仕事を生んでくれる
行政書士の人脈だけでなく、
他業種の人脈も行政書士の仕事を生んでくれる可能性があります。
例えば会社が新しい業務を始める際に「許認可申請」が必要なケースが出てきます。
役員が変わったり、資本金を増減させたりすると定款を変更しないといけませんし、
外国人労働者を雇う場合には就労ビザの取得・更新が必要です。
また行政書士業務ではなく、
法務関係の監査担当として外部役員に招かれる可能性もあるのです。
一般企業だと少ないですが、漁協や農協などの非営利団体の外部役員に
行政書士が名を連ねていることは少なくありません。
地元の商工会議所が行う「異業種交流会」など、色んな業種の人が集まる会合には
時間が許す限り顔を出すようにした方が良いですね。
必要最低限のビジネスマナーを習得
特に未経験で、一般企業での就業経験が無い場合には、
必要最低限のビジネスマナーが身に付いてないケースがあります。
別にCAやデパートの店員などのように、
完璧なビジネスマナーを身に付ける必要はありません。
行政書士事務所の「お客様」である依頼者を、
不快にさせない程度のビジネスマナーが身に付いていれば十分です。
具体的には「正しい敬語」が使えて、
依頼者を「お客様としてもてなせる」ことができればOKです。
「それぐらい誰でもできるのでは?」と思うかもしれませんが、
実際に就業した経験が無いと身に付けられていないことも結構多いのです。
営業活動もしているし人脈もあるのに仕事が増えないという行政書士は、
依頼者と接する時の言葉遣いや態度が良くない可能性があります。
マナー講座を受けるほどのことは無いですが、「自分では正しようがない」と思うので
あればマナー講座を受けるのも1つの方法ですよ。
新人行政書士がやりがちな「取り返しのつかないミス」
3つの重要ポイントに加えてもう1つ、新人行政書士がやってしまいがちな
「取り返しのつかないミス」を紹介しておきましょう。
新人行政書士がやってしまいがちなのが「料金設定のミス」です。
相場より高く設定しすぎるのではなく、
反対に相場よりも安すぎる設定にしてしまうことです。
「安く設定すれば仕事がたくさん入ってきて良いのでは?」と思うかもしれませんが、
料金の安い行政書士は「料金が安いこと」しか取り柄が無いと思われてしまいます。
要するに「この行政書士でないとダメ」ということが無く、
より料金の安い行政書士が出てくるとそちらに仕事を奪われてしまうのです。
また1件当たりの単価が安いため、
単に忙しいだけで全然収入が増えないことにもなります。
さらに時間的に受けられない仕事を繋がりのある行政書士に頼もうと思っても、
単価が安すぎると請け負ってもらえません。
実際に料金を相場に比べて安すぎる設定にしたために、
廃業に追い込まれた行政書士も少なからず居るのです。
日本行政書士会連合会の公式サイトに「報酬額統計」の結果が掲載されていて、
業務ごとの大体の料金相場が分かるようになっています。
料金を上げることは難しいですが下げることはできるので、
最初は相場よりも少し高いぐらいの料金設定にしておくと良いですよ。
まとめ
行政書士は開業する以外に実務経験を積むことが難しいので、
未経験でも自分で事務所を構えて開業するしかありません。
未経験で開業して成功している行政書士もたくさん居ますから、
やり方を間違えなければ未経験でも十分にやっていける可能性があります。
どうしても未経験での開業が不安という場合には、
資格予備校の実務講座を利用するのも1つの方法ですよ。