こんにちは、洋平です。
今回は、許可申請など「風営法」関連は行政書士にとって儲かる業務なのかについて
詳しく見ていきましょう。
風営法の許可申請は行政書士の独占業務の1つ
「風営法」は正式名称「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」です。
この法律で「風俗営業」として指定されている業態のお店を開く場合には、
風営法に則った許可申請が必要となります。
もちろん風俗営業許可が必要な本人が申請するのが基本ですが、
行政書士は本人に代わって書類を作成した申請そのものを行うことができます。
風営法の許可申請そのもの代行や申請に必要な書類の作成は、
行政書士の「独占業務」の1つとなっています。
要するに、風営法の許可申請や書類作成の代行は、
数ある士業の中でも行政書士にしか許されていないということです。
まあ厳密に言うと、士業の中でもオールマイティ的な存在である「弁護士」は、
行政書士の独占業務である風俗営業許可申請の代行ができます。
ただ、風俗営業の許可申請で何か揉め事でもあるならともかく、そうでないなら
わざわざ弁護士に風俗営業許可申請だけを依頼することはまずありません。
なので風俗営業の許可申請が必要な場合には、
十中八九行政書士に代行の依頼が入ることになりますね。
風俗営業の許可申請なんて儲からないのでは?
「風俗営業の許可申請が必要なお店なんてこれから減っていくだけで、
儲からないんじゃないの?」と思う人も居るかもしれません。
一般的に、風俗営業の許可申請が必要なのは
・キャバクラやクラブなどの従業員による接待を伴う飲食店
・性風俗店
などだけだと勘違いされがちです。
確かにこうした業態のお店を営業するには風俗営業の許可申請が必要ですが、
風営法で指定されている業態はこれらだけではありません。
風営法では、1~5号に「特定遊興飲食店営業」を加えた6業態が「風俗営業」として
指定されています。
1号営業は「遊興または飲食に従業員の接待を伴う営業」で
・キャバクラ
・クラブ(お酒を飲む方)
・性風俗店
などがこれに当たります。
2号営業は「店内の照明が10ルクス以下の飲食店」で、
「バー」や一部の「喫茶店」などが該当します。
3号営業は「広さ5㎡以下で内部が容易に見通せない客席を設けていて、
店内の照明が10ルクス以下の飲食店」となります。
これだけだとちょっと分かりにくいですが、簡単に言うと、
2人きりになれる狭い個室があるカップル喫茶や個室居酒屋などのことですね。
4号営業は「射幸性をあおる恐れのある遊戯を提供する店」で、これには
・マージャン店
・パチンコ店
などの遊戯施設が該当します。
5号営業は「テレビゲーム機等を設置して遊戯させる店」で
・ゲームセンター
・ダーツバー
などがこれに当たります。
最後の「特定遊興飲食店営業」は「ダンスができる飲食店」で
・ディスコ
・クラブ(踊る方)
を指します。
1号営業に該当するお店は確かに減っていく可能性がありますが、
それ以外は大幅に増えることはないものの急激に減ることもないと思われます。
そう考えると、許可申請など風営法関連の業務は、
行政書士にとってはこれからも「儲かる分野」と考えて良さそうですね。
風営法の営業許可は更新こそ不要だが・・・
風営法の営業許可に有効期限は無く、
同じ経営者が同じ業態で営業を続ける限りは更新の必要がありません。
建築関係の許可は数年ごとの更新が必要ですから、
許可申請の依頼を受けたら継続して更新申請の依頼もしてもらえる可能性があります。
その点更新しなくて良い風営法の許可は継続性は期待できず、
許可が下りたら依頼者との関係もそれで終わりとなってしまいます。
ただ風俗営業の許可は個人もしくは法人に与えられるもので、
お店に付いているものではありません。
ですから風俗営業許可付きでお店を売却することができず、お店を買い取った
新しい経営者が新たに風俗営業の許可を申請しないといけないのです。
その他各種変更手続きが必要なケースも出てくるので、
風俗営業の許可を受けた後も行政書士の力が必要となる場面は結構あります。
ちょっとした模様替えでも変更届出が必要
風俗営業の許可申請では建物の内部構造なども対象となっているので、
ちょっとした模様替えを行うだけでも変更届出が必要だったりします。
例えば
・大規模な修繕、模様替え
・客室の位置、数、面積の変更
・壁やふすまなど建物内部の仕切り設備の変更
・遊技機の変更(4号営業)
などの変更を行う場合には、変更前に「変更承認申請」を行わないといけません。
4号営業のパチンコ店については、パチンコ台の入れ替えはもちろん、
パチンコ台の部品交換や修理でも事前の承認申請が必要となります。
パチンコ台の受け皿や前面ガラス、カギといったパチンコ台の稼働とは
直接関係の無い部品の交換修理は事後届出でOKです。
また
・営業者、管理者の氏名、住所の変更
・営業所の名称、住所の変更
・照明や音響、ゲーム機の入れ替えなど軽微な設備の変更
・法人の代表者、役員の変更
・法人の代表者、役員の氏名、住所の変更
・店舗名の変更
・小規模な修繕、模様替え
などを行う場合には、変更後一定期間内に「変更届出書」を提出する必要があります。
さらに変更届出までは必要無いものの
・軽微な破損個所の原状回復
・電球交換など軽微な設備の更新
・椅子やテーブルの配置変更
などを行った場合は、所轄の警察署に連絡を入れておいた方が良いですよ。
場合によっては変更届出書の提出を求められることもあるので、
どんな些細な変更でも風俗営業においては自己判断ではしない方が賢明です。
風俗営業の許可申請は儲かる分野だが簡単ではない
風営法関連は行政書士にとって儲かる分野ではあるものの、
決して簡単な業務ではありません。
風営法は制定されてから70年以上が経過していて、
その間に30回以上の改正が行われています。
他の法律では改正によって規制が緩くなることもありますが、
風営法は基本的に改正のたびに規制が厳しくなっているのです。
そのため風俗営業の許可申請に必要な書類の量が膨大になっています。
個人で申請する場合は「風俗営業許可申請書」に加えて
・営業方法に関する書類
・営業所の使用権原に関する書類
・営業所の平面図
・営業所の半径100mの略図
・申請者の住民票の写し
・欠格事由に該当しないことの誓約書
・申請者の身分証明書
・法務局の証明書
・業務に関する誓約書
といった書類を提出する必要があります。
法人で申請する場合は、個人で申請する際の書類と
・定款
・登記簿謄本
・役員の住民票の写し
・役員の身分証明書
・役員の誓約書
なども必要となります。
さらに申請書類を提出して終わりではなく、
申請時に公安委員会の担当者による面接が行われます。
書類にも面接にも不備がなければ申請が受理されて、
そして風俗営業を行う店舗の検査を受けることになるのです。
提出した図面と店舗が合致しているかを確認するためで、
大きな齟齬があると許可が下りない可能性が高くなってしまいます。
ですから提出する平面図については、
できれば「CAD」を使って正確に図面を引きたいところです。
建築士ほどの腕前までは必要ありませんが、風営法関連の業務を請け負うなら
正確な図面を引ける技術を身に付けておく方が良いですよ。
風俗営業許可を申請する上で行政書士が頭に入れておくべきこと
風俗営業許可申請には、必要な書類が多いだけでなく、
行政書士が頭に入れておくべき注意事項がたくさんあります。
まず風営法では「欠格事由」が定められていて、
申請者に欠格事由が1つでも当てはまると風俗営業の許可が下りません。
欠格事由は全部で6つあり、1つ目は「成年被後見人もしく被保佐人、
あるいは破産者であること」です。
「成年被後見人や被保佐人」というのは、
簡単に言うと「成人として正しい判断ができない恐れがある人」のことです。
「破産者」については「資格制限」を受けている場合のみで、
「復権」していれば風俗営業の許可申請が行えます。
2つ目は「1年以上の懲役もしくは禁固の刑罰を受けている人」です。
ちなみに風俗営業絡みなど一部の罪状については、
1年未満の懲役・禁固、罰金でも欠格事由となります。
ただし刑期もしくは執行猶予期間を満了後5年以上が経過していれば、
風俗営業の許可申請に影響はありません。
3つ目は「集団的、常習的に不法行為を行う恐れがある人」で、
簡単に言うと「反社会的勢力の構成員」ですね。
4つ目は「アルコールや薬物の中毒者」、
5つ目は「5年以内に風俗営業許可を取り消された人」となっています。
風俗営業許可が取り消された法人の役員や許可が取り消されるのを察知して
事前に廃業した人も含まれます。
6つ目は「成年者と同一の営業に関する行為能力を有しない未成年者」です。
未成年であっても、「婚姻している(していた)」場合や「法定代理人(親権者など)に
営業の許可を受けている」場合には風営法では「成年者」と認められます。
なので未成年者でなおかつ婚姻歴が無く、親など法定代理人の許可が
受けられていない場合は風俗営業の許可は受けられません。
行政書士として風営法関連の業務を行うのであれば、
これらの欠格事由は全て頭に入れておきましょう。
風俗営業ができるエリアが決まっている
都道府県ごとに風俗営業可能なエリアというのが決められていて、
風俗営業の許可申請をするならそれも頭に入れておかないといけません。
一般的に
・学校(幼稚園、小学校、中学校、高校、大学など)
・図書館
・児童養護施設
・病院、診療所
といった施設が営業所の半径100m以内にあると風俗営業の許可が下りないのです。
また申請時点ではそれらの施設が無くても、それらの施設の「建設予定地」があると
やはり風俗営業はできないエリアとなってしまいます。
ただし一部の自治体では特例として、学校などの施設が半径100m以内にあっても
風俗営業が認められるケースがあります。
なので頭に入れておくだけでなく、
申請の依頼があるたびに自治体に確認することも重要ですよ。
風俗営業を行う建物にも決まりがある
風営法では風俗営業を行う建物にも細かい基準が定められていて、
その全てをクリアしていないと風俗営業の許可は貰えません。
まず建物内に客室を2室以上設ける場合には、
1室の面積が16.5㎡(和室は9.5㎡)以上となっていることが必要です。
次に建物の外側から客室内が見えないようになっていて、
客室内に仕切りやカーテンなど見通しを妨げるものが設置されていないこと。
さらに風俗を害する掲示物を貼ったり装飾を施してはダメ、
客室の出入り口にカギを付けるのもダメです。
(建物自体は施錠できるようになっていても問題ない)
建物内の照明は5ルクス以上で、ダンスをするための設備を備えておらず、
騒音が55デシベル未満に抑えられることとなっています。
これら1つでも満たしていない建物では風俗営業ができませんから、
風俗営業の許可申請を行う場合には事前に現地調査を行いましょう。
反社会的勢力との繋がりができてしまう恐れもある
今でこそ風俗営業は健全化されつつありますが、
一昔前までは風俗営業=反社会的勢力の資金源となっていました。
現在でも表だった繋がりは無いものの、特にキャバクラや性風俗店などは
反社会的勢力と事実上繋がっているケースも少なくありません。
行政書士が風営法関連の業務を行うということは、
反社会的勢力との繋がりができてしまう恐れもあるということです。
一度繋がりができてしまうと、世間からは「反社会的勢力側」と見なされて、
通常の業務依頼が入りにくくなってしまいます。
また不法行為の片棒を担ぐようなことをさせられて、
最終的に警察のお世話になるといったことも十分に考えられます。
行政書士にとって風営法関連の業務は儲かる分野であり、
将来的にも安定して収入が得られる可能性のある分野です。
ただ小さくないリスクもありますから、風営法関連の業務を行う場合には
反社会的勢力との繋がりができないように細心の注意を払う必要がありますよ。
まとめ
風俗営業の許可申請を中心とした風営法関連の業務は、
行政書士にとっては現在も将来的にも「儲かる分野」となっています。
実際に風営法関連の業務を専門的に行っている行政書士も居るぐらいなのです。
とは言え、他の許可申請に比べて風俗営業許可は規制が厳しく、
法律改正によって今後さらに厳しくなることも十分に考えられます。
現状でも申請に必要な書類は多いですし、
申請するに当たって頭に入れておかないといけないこともたくさんあります。
また法律改正によって大幅に申請ルールが変更されることも無いとは言えません。
ですから、これから行政書士として風営法関連の業務を手掛けるなら、
不断の情報収集と学習が必要ですよ。